2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月5日

 10月27日付英フィナンシャル・タイムズ紙で、スティーブンス同紙コラムニストは、プーチンとの関係を再構築するには、決意・一貫性・関与・尊敬の4つを持ってあたるべきだと述べています。その要旨は以下の通りです。

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 プーチンが最も傷ついたのは、2年前にオバマ大統領が言ったことである。オバマは、ロシアはもはや「地域大国」に過ぎず、ウクライナへの介入は強さではなく弱さを示すもので、ロシアの行動は最大の脅威ではないと述べた。

 こうしたオバマの評価は、正しいが、同時に間違っている。経済、人口動態、社会、技術といったほぼ全ての面で、ロシアは衰退に直面している。しかしオバマは、ロシアは軍事力行使に躊躇しないということを見誤った。オバマの「リセット」はクリミア併合、東部ウクライナ占領、アレッポ空爆でダメになった。

 ウクライナとシリアへの介入が、ロシアの広範な戦略であることは誰の目にも明らかだ。体制の生き残りと西側への敵意は表裏一体である。プーチンの攻撃目標はリベラルな国際秩序である。近隣国への保護権を持ち、世界の問題に意味を持つ大国であることを欲している。

 西側には簡単にとりうる対策がない。だが、冷戦から有益な教訓を学ぶことはできる。尤もロシアはソ連ではない。米国と同盟国に有益なのは、現実に基づくリセットのための枠組み原則を決めることである。決意、一貫性、関与、尊敬から始めるべきである。

 最も重要なのは決意である。プーチンは機会主義者であり、相手の弱点を見つけだし、試すことをしてきた指導者である。これまでの西側の間違いは、ロシアを抑止する行動が挑発と受け取られるのではないかと心配したことである。決意を見せることに失敗したために、緊張を取り除くどころか高めてしまった。東欧へのNATOの前方展開は、一定程度民衆に安心を供与することに繋がっている。しかし、米国はシリアと欧州で、一線を越えれば重大な結果を招くとの明確なメッセージを発するべきである。

 2つ目の要素は一貫性である。プーチンは、分裂と躊躇いにつけ込むことに長けている。欧州諸国はロシアに対し、お互いの違いを脇に置くことができることを示すべきである。EUの対露経済制裁を数ヶ月毎に更新するのは、ロシアに工作の機会を与えるだけであるから、無期限制裁を宣言すべきである。制裁解除は、ロシアが行動を変えたときだけとすべきである。一貫性を維持するには、敵対行動に対して段階的対応をとる必要がある。ロシアはサイバー攻撃が旅行制限や制裁の強化などの反応を呼び起こすことを知るべきである。

 関与については、相手との関係を強い意志をもってマネージすることである。対テロや核不拡散など双方にとって有益で協力できる分野では、共同行動のためのイニシアチブを西側は発揮すべきである。

 最後の単語は尊敬である。ロシアは、ほとんどの側面で弱いのは明らかであるが、米国大統領が不都合な真実を口にして、傷つきやすいプーチンと対峙するのは賢いとは言えない。尊敬するふりをすることは外交では必要である。悲しいことに、プーチンがロシアは大国であると装い続けていると、ロシアは最終的には大国ではなくなっていくだろう。
出 典:Philip Stephens‘Four rules for a realistic reset with Vladimir Putin’(Financial Times, October 27, 2016)
https://www.ft.com/content/e7db344c-9aca-11e6-b8c6-568a43813464


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