2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月29日

 韓国在住ジャーナリストのドナルド・カークが、10月25日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説において、北朝鮮の挑発等を受けて韓国では核保有や先制攻撃、原子力潜水艦建造など一層強力な防衛オプションを模索する議論が高まっている、と述べています。要旨、次の通りです。

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自前の核兵器

 韓国では、長年の躊躇の後、北朝鮮のミサイル・核施設に対する先制攻撃が公然と議論されている。政治家達は北に対して最低限大規模な通常戦力で対応することを韓米両国の正式な政策とするよう求めている。

 さらに与党の間では自前の核兵器を保有すべきだとの声が高まっている。米国は、韓国による核開発研究の発覚(朴正熙大統領時代)の時から一貫して韓国の核保有には反対してきた。右派の人々は朝鮮戦争後、米国が韓国に課した制約に苛立ちを感じている。昨年改定された米韓原子力協定により韓国が原子力エネルギーのためにウランを再処理することができるようになり、科学者たちはいずれ乾式再処理(注:水を使わない再処理)を行うことを希望している。これにより使用済み燃料の再処理が可能となる。それで核兵器製造に必要な精度の材料が手に入るわけではないが、これは韓国の核兵器保有への幕開けになると考えられている。

 与党の一部グループは、「北が再び核関連の挑発を行う場合には」北への核攻撃をするとの決定を含め「詳細かつ効果的な抑止措置」を韓米両政府が作成するよう求めた。

 政府の方では、与党の熱心な後押しにより、原子力潜水艦建造計画を検討している。これには米国の支持が必要だが、彼らは、米国は核保有を認めないかもしれないが、原子力潜水艦の建造には抵抗はないのではないかと楽観的にみている。原子力潜水艦の建造を求める声が高まっている。

 ウォン・ユーチョル議員は、25年前に米核兵器が韓国から引き揚げられて以後、米国の核の傘は意味がないと考えてきたと言う。同議員は雨が降るたびに傘を借りる訳にはいかない、自らのレインコートを持たねばならない、と述べている。

 米韓両政府関係者は平壌急襲による北の指導部壊滅について公然と話すようになっている。ひどい誇張と見えるかもしれないが、南北の人々は真剣だ。北はそれ故に自衛のために核開発が必要だと主張し、韓国の人々は指導部壊滅が最終的な解決になると考えている。

 10月に黄海で米韓演習(米空母ロナルド・レーガンも参加)が実施されたが、韓国側の説明によれば、これまで以上に具体的に北の核・ミサイル施設や司令部、そして金正恩に焦点を当てた演習だったという。韓国海軍司令官は、我々は北からのあらゆる挑発に対応できる、必要な時には懲罰する態勢を整えていると述べた。国防関係者や保守政治家達は北が核弾頭を増やす前に先制攻撃を掛ける他に選択はなくなるだろうと確信するようになっている。

出典:Donald Kirk, ’South Korea’s March Toward a Strike-First Nuclear Policy’(Wall Street Journal, October 25, 2016)
http://www.wsj.com/articles/south-koreas-march-toward-a-strike-first-nuclear-policy-1477414963


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