2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月25日

 ドゥテルテの反米親中的言動について、台湾では、台湾にとってはチャンスであるとの論議があります。李榭熙ペース大学教授は、10月24日付台北タイムズ掲載の論説で、台湾の「南方政策」は経済的なものから戦略的なものになるかもしれないと指摘し、元中華民国国家安全会議諮詢委員・元国策顧問の黄天麟は、同18日付論説で、さらに踏み込んで米日台の同盟が必要である、と論じています。まず、李論説の要旨は、次の通りです。

ドゥテルテの狙い

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 ドゥテルテは、米国との戦略的・経済的紐帯を絶ち中国との同盟を形成するとして世界中を驚かせた。これは、米国その他東アジア諸国政府を大いに困惑させる原因となった。

 ドゥテルテの宣言は、韓国による北朝鮮に対する米製THAADミサイルの配備や、中国の南シナ海への歴史的権利を認めないとする常設仲裁裁判所の7月の裁定など、外交的挫折の後遺症に直面していた中国に対し、地域への権利主張と軍事化の努力に新たなエネルギーを与えた。

 ドゥテルテは、ベニグノ・アキノ3世前大統領の海洋主権問題での強硬姿勢を完全に逆転させ、240億ドル相当の中国の投資と引き換えに南シナ海の海洋資源への中国の主張を認め、中国に対し、ハーグの国際裁判所の裁定という法的危機から逃れるためのメンツを与えた。

 ドゥテルテが中国と米日を反目させてさらに利得を引き出そうとしているのかどうかはまだ分からないが、地域の再均衡は米次期大統領に東アジア戦略の再考と新たなパートナーの認定を促し得る。

 この面で、台湾は、「南方政策」の優先順位を、経済から地政学的戦略に変更したいと考えるかもしれない。台湾は、商業的機会の追求に加え、自らを地域の新たな安定化勢力と位置づけ、海洋主権紛争を議論する多国間プラットフォームの設立において米国の同盟国を助けるべきである。そうすることが、台湾の孤立化をもくろむ中国の新たな国際的キャンペーンに対する唯一の効果的な対応である。

出典:Joseph Tse-Hei Lee [李榭熙],‘Duterte’s rebalancing could be an opportunity’(Taipei Times, October 24, 2016)
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2016/10/24/2003657792


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