次に、黄論説の論旨は、以下の通りです。
状況は台湾有利に
親中の学者やメディアは蔡英文に対し、中国の台頭を警告し、両岸関係を深化させることで対処するよう言っているが、世界で起きていることは正反対である。ここ1年以上、国際政治環境は台湾に有利になっており、台日米間の同盟への追い風となっている。これは、経済的にも軍事的にも当てはまる。
経済的側面では、親中メディアは、中国の経済・軍事・技術部門が間もなく米に追いつくことを「一つの中国」政策の根拠とするが、昨年の米国のGDPは17.9兆ドル、中国のGDPは10.9兆ドルであった。中国のGDPが米国を間もなく凌駕するというのは確かだが、米国が対中政策を調整しなければならないのはまさにそのためである。それには、米日台の同盟形成が必要となる。米国は、経済的優位を維持するにはGDP3位の日本、同17位の台湾と組むほかない。
軍事面からは、フィリピンのドゥテルテ大統領が、米国よりも中露と組みたいと言い、オバマに「地獄に落ちろ」と言って、全世界に衝撃を与えた。10月7日にフィリピンは、南シナ海での合同パトロールと米比年次演習の中止を米に通告した。他方、同氏の中国訪問は国賓待遇となった。フィリピンと中国は、南シナ海をめぐる両国間の事案への常設仲裁裁判所のフィリピンに有利な判決を覆す合意に達したように見える。
ドゥテルテの変心は、米国の「第一列島線」への展開にとり痛い一撃だが、フィリピンの抜けた第一列島線は、台湾の軍事的役割をさらに重要なものにしよう。台湾は、日豪を除き、東アジアで最重要となるであろう。
中国の軍事的拡張、フィリピンの変心を受け、米日台間の軍事同盟が必要となっている。東アジアは中国式の全体主義的資本主義と民主的資本主義の戦いの場となりつつある。
フィリピンの変心は天の恵みではあるが、ヒラリー・クリントンも言ったように、対中依存は台湾を弱くする。台湾政府は、台湾を弱めるだけの中国との経済統合を改めるべきである。台湾政府は、米と日本に台湾の主権的地位と国際的承認の向上を求めつつ、国内投資に集中するべきである。これが、台湾の唯一の打開策である。
出典:Huang Tien-lin [黄天麟],‘The Taiwan-US-Japan alliance’(Taipei Times, October 18, 2016)
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2016/10/18/2003657387