2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月2日

 米外交問題評議会上級フェローのレイ・タキーが、10月31日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説において、かつてのような統一シリアは望むべくもなく、せいぜい可能なのは、何らかの連邦制度の下で、いくつかの地域が共存することである、と述べています。

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ケリー国務長官の外交の最大の誤り

 シリアに関する米国の戦略は、まず米ロが合意し、次いで地域の主要対立国であるイランとサウジが和解し、和平案をシリア内戦の対立グループに飲ませるというものである。しかしイランとサウジは地域の冷戦を戦っていて和解しそうになく、シリア内戦の対立グループは、あまりに手を広げ過激であるので、相違を乗り越えるのは不可能である。シリアの誰もが勝つために戦っている。

 ケリー国務長官の外交の最大の誤りは、ロシアまたはイランの支持を得てシリアを再建できると考えていることである。たとえ合意ができても交戦グループは戦闘を止めそうにない。米国と英仏などの西側の主要同盟国にとって考えられる唯一の選択肢は、権限分割の諸原則を作り、大規模な兵力を展開してその順守を確保することである。分割案は、シリアの民族、宗教の違いを考慮し、国を分割しようとするものである。

 アラウィ派や他の宗教グループには、公国ともいうべきものが認められる。スンニ派はISの影響力を排除したのち自身の勢力圏を持つ。

 これらのグループは弱い連邦制のもとで共存することが期待される。このような体制は外部勢力による長期にわたる占領があって初めて定着するだろう。すなわち西側諸国が20世紀初めに行ったような実力を行使するということである。このような事情からシリアの内戦の早期終結は望めない。すべての当事国に戦い続ける理由があり、戦争を終わらせる力を持っている米国はその力を使うのを躊躇している。その間政治家は成功の見込みのない中途半端な提案をし続けるだろう。そしてシリアは炎上し続ける。

出典:Ray Takeyh,‘Partition presents the best hope for peace in Syria’(Financiak Times, October 31, 2016)
https://www.ft.com/content/06e2af00-9d19-11e6-8324-be63473ce146


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