2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月18日

 米国の同盟諸国は、トランプの発言の趣旨を測りかねていますが、トランプは多くの発言を軌道修正しています。

 日本と韓国については、米軍の駐留費をもっと負担すべきで、さもなければ核武装も含めもっと自主防衛に努めるべきであるとの趣旨を述べましたが、その後核武装発言は否定し、安倍総理との会談では日米同盟の重要性を確認しています。

 時代遅れであり、米国の支援を求めるならもっと軍事費を増大させるべきである、と言っていたNATOについてすら、その後NATOのストルテンベルグ事務局長との会談で、NATOの永続的重要性に言及しています。

トランプに確固たる理念はあるのか?

 したがって、トランプがどのような同盟政策をとるかは、今後の具体策を見るしかありません。ただ、世界における米国の役割について、トランプが確固たる理念を持っているとは思えません。

 トランプは、米国はもう世界の警察官の役割は果たさないとの趣旨の発言をしていますが、これは単に経済的負担の話をしているのではなく、自由と民主主義を守り、広めるという理念は掲げないということのようです。米国のこの理念のもとに、戦後世界は「パックス・アメリカーナ」の世界といわれました。中国の台頭と、それに国力が伴うかの問題は抱えながらもプーチンのロシアの挑戦によって、もはや世界は「パックス・アメリカーナ」とは言えなくなっていますが、トランプは理念の面からも「パックス・アメリカーナ」を過去のものとしようとしています。

 戦後の米国の同盟政策は、自由と民主主義を守るという理念と戦略の基礎の上に立っていましたが、トランプの外交政策にはこれが欠けています。したがって、たとえ同盟政策が継続されるとしても、米国の世界戦略の上に立ったこれまでの同盟政策と同質と言えるかどうかの問題をはらむこととなるでしょう。

  
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