2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月14日

 トランプはプーチンに親愛の情を抱き、ロシアが対テロやイラン問題で同盟相手になると見ているが、それは幻想に過ぎないと2月11日付の英エコノミスト誌が警告しています。その要旨は、以下の通りです。

(iStock)
 

 トランプ大統領はロシアと新たな戦略関係を築きたいようだ。トランプはプーチンに親愛の情を抱き、プーチンを「殺人者」と言ったフォックス・ニュースに、「殺人者は大勢いる。米国が純真無垢だと思っているのか」と言い返した。米国の大統領が、自国をロシアと同様に残忍だと言うのは、前代未聞だ。

 トランプ周辺は次のように考える。先ず米国はプーチンと組んでISを打破し、一方、ロシアはイランとの協力を止め、ウクライナでの紛争の扇動やNATO諸国への嫌がらせをしないことで合意し、核軍縮協議も始める。また、米ロの接近は、長期的に中国の勢力拡大も抑えてくれるかもしれない。昨年、バノンは、米国が「南シナ海で5-10年以内に戦争を始める」のは確かだと述べた。だとすると、中国と長い国境を接し、核を持つロシアを嫌う理由があるだろうか。

 大いにある。米ロの利害はあまりにも異なる。例えば、シリアではプーチンはISとの戦いを喧伝するが、実質何もしていない。また、プーチンは、アサド政権の温存と中東におけるロシア軍の恒久的プレゼンスを求める可能性があるが、これらはシリアや地域の安定にとっても、米国にとっても良くない。それに、米ロ両軍が肩を並べて戦うのは難しい。システム的にかみ合わない。

 同様に、ロシアはイランとも対決する気はない。イランはロシアにとって有望な輸出市場だ。両国は、協力して中東を管理することを望んでいる。

 ロシアと組んで中国と対決するという考えはさらに非現実的だ。経済が衰退、人口が減り、軍も中国より小規模なロシアは、中国よりはるかに弱体だ。プーチンは対中貿易を重視し、中国の軍事力を恐れている。隣国を苛め、西側の説教を嫌う点も、ロシアと中国は共通している。

 欧州に関するプーチンの望みは、①西側の制裁解除、②ウクライナ東部占領の承認、③NATOの弱体化の黙認だ。プーチンはトランプが欧州の対ミサイル防衛を反故にし、NATO拡大を止めて、ロシアが旧ソ連圏で自由に行動できるようにしてくれれば、大いに喜ぶだろう。

 ロシアと大きな取引をするのは幻想にすぎない。

 ロシアとは、取引や仲違いよりも、関係改善に向けて軍備管理や米ロの偶発的衝突の防止等、小さなことに努力する方が良い。そして共和党や国務、国防両長官はトランプにこのことを納得させなければならない。
出 典:Economist ‘Donald Trump seeks a grand bargain with Vladimir Putin’ (February 11, 2017)
http://www.economist.com/news/leaders/21716609-it-terrible-idea-donald-trump-seeks-grand-bargain-vladimir-putin


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