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2017年3月30日

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藤川大樹 (ふじかわひろき)

東京新聞記者

東京外国語大学外国語学部卒業。2004年、中日新聞社入社。中日新聞社東京本社(東京新聞)経済部、外報部などを経て、現在は社会部。近著に『ミャンマー権力闘争 アウンサンスーチー、新政権の攻防』(共著、KADOKAWA)がある。

 ミャンマーで昨年春、アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)の新政権が誕生した。半世紀にわたり国軍の強い影響下にあった同国で、選挙による民主勢力への政権交代は歴史的な快挙だった。あれから、間もなく1年。国民の熱狂は次第に冷めつつある。国際社会も、西部ヤカイン(ラカイン)州の少数派イスラム教徒ロヒンギャに対する人権侵害疑惑に厳しい視線を向けている。実務能力を欠く新政権に、国軍は早くも見切りをつけたとみられ、アウンサンスーチーの政権運営は難局に差しかかっている。

ビルマ(現ミャンマー)建国の英雄である父アウンサンと同じく、アウンサンスーチーは政治家としての実績を残すことができるのか?
(写真・LAURENDECICCA/GETTYIMAGES)

イスラム教徒の法律顧問が暗殺された衝撃

 1月29日夕方。最大都市ヤンゴンの国際空港で、一人のイスラム教徒が暗殺された。NLDの法律顧問を務めるコーニーである。政府使節団の一員として訪問していたインドネシアから帰国したところだった。孫を抱きかかえたコーニーの後ろから、短パンにピンクのシャツを着た男が近付き、拳銃の引き金を引いた。事件直後に撮影された動画には、大量の血を流し、路上であおむけに倒れた姿が映り、即死であろうことが見てとれた。

 筆者はその日の夜、ミャンマー人の友人からの電話で事件を知った。昨年7月にヤンゴンにあるNLD党本部でコーニーと面会したばかりだっただけに、衝撃を受けた。180センチを超す恰幅の良い体格に、南方アジア系の彫りの深い顔立ち。軍事政権下の2008年に制定された憲法を改正する必要性と、台頭する仏教ナショナリズムへの懸念を流ちょうな英語で訴えていた。

 報道によれば、新政権発足時には、憲法の規定で大統領に就任できないアウンサンスーチーを事実上の最高権力者にするため、国家顧問ポストを新設する法案作りに携わっていたという。

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