WEDGE REPORT

2017年3月31日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。現在、神田外語グループ参与。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 トランプ大統領にとって首都ワシントンのホワイトハウスほど居心地の悪い住宅環境はないだろう。就任以来、2階のベッドルームから見下ろすペンシルバニア大通り周辺では、連日のように騒々しい「アンチ・トランプ」集会やデモが繰り返され、ウェスト・ウィング(西館)大統領執務室で取り組む内外政策は思うように進まず、八方ふさがり状態だ。その背景に、いまだに多くの国民の支持が得られない厳しい現実がある――。

(GettyImages)

 ワシントン政界を敵視し、「アウトサイダー」の看板を掲げて鳴り物入りで登場したトランプ大統領。だが、今後の成否を占う上でもうひとつ無視できない特異性がある。すなわち米国史上前例のない「マイノリティ・プレジデント」であるという事実だ。

 「マイノリティ」とは、白人が主流を占めるアメリカ社会では通常、黒人、ヒスパニック、アジア、アラブ系などの「少数民族」をさすが、トランプ氏の場合は、「マジョリティ」(多数派)でなく「マイノリティ」(少数派)の支持しか得られていない大統領であることを意味している。

 トランプ政権発足以来の各種世論調査機関が随時公表してきた大統領支持率が、そのことを示している。 とくに、草分け的存在であるギャラップ社が、就任式以後、毎日一貫して実施してきた、有権者1500人を対象とした大統領支持率追跡調査Daily Trackingのデータは注目に値する。

 それによると、初日の1月20日では「支持」「不支持」が共に45%でまったくの互角だったが、翌日調査では「不支持46%」が「支持45%」を上回った。その後、3日目、4日目にいったん「支持46%」「不支持45%」と逆転したものの、以後、60日以上も連続して「不支持」が「支持」を上回ってきており、3月26日には「不支持57%」「支持36%」と、大統領を「支持しない」と答えた人が21%もの差をつける結果となっている。

 しかも、連日発表される数字には多少の変動こそあるものの、特筆すべきは、支持率は就任以来、今日に至るまで1日たりとも過半数を超えたことがないことだ。米議会調査局(CRS)の長年の知人は、「彼こそまさに歴史に残るマイノリティ・プレジデントだ」と言い切る。

 実際、歴代大統領の場合を見ると、少なくとも就任後100日間の「ハネムーン(蜜月)期間」の支持率は、近年のクリントン(1993年)、ブッシュ(2001年)、オバマ(2009年)各大統領は言うに及ばず、建国以来まで遡っても、誰もが60~80%台の高い支持率を記録してきた。つまり、過去のどの大統領も「マジョリティ・プレジデント」だった。就任以来、1日たりとも50%をクリアできない「マイノリティ・プレジデント」はトランプ氏が初めてだ。

 このことは、ホワイトハウス入り前から本人が十分自覚していたはずだ。昨年11月の選挙で選挙人の数でこそ多数を制したものの、投票総数では民主党のヒラリー・クリントン候補に280万票もの差をつけられる結果だったからである。トランプ氏には“illegitimate(正当性を欠く)President”とのレッテルさえ貼られている。

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