2024年4月28日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月27日

 ワシントンポスト紙コラムニストのランペル氏は、2月20日付の同紙で、トランプ政権による数字の操作について論評しています。要旨は次の通りです。

(iStock)

 大統領選挙の候補者の経済政策を評価する目安として、成長率を高く見せる候補者の政策ほどよくない政策であるとの経験則がある。トランプ政権は現在予算の作業を行っているが、こうした経験則が当てはまりそうである。

 選挙後、政権移行チームは予算編成作業に入った。通常、この作業は大統領諮問委員会(CEA)のスタッフが、現在の政策を前提にした場合の成長率や財政赤字についての基準ケースを推計することから始まる。そして、新政権の新しい政策によってこの基準ケースの成長率や財政赤字はどの程度修正されるかという作業を行う。最終的な結果は他の機関の見通しよりも楽観的になることがよくあるが、大きな差ではないのが普通である。

 ところが、今回は異なっている。トランプ政権移行チームはCEAのスタッフに3~3.5%の成長率を命令した。そして、CEAのスタッフはこの高い成長率が試算されるように、計量モデル内の数値を隠しておくように命じられた。

 このような方法で予測された3~3.5%成長はいかに変わっているかを見ておこう。まず、過去10年間の年率の実質成長率は2%以下であった。また、他の機関の今後の成長予想を見ても、例えば、FRB、CBO、民間の予測は1.8%~1.9%である。すなわち、ご都合主義に基づいてトランプチームが預言する成長率は他よりも1%も高いのである。減税と規制緩和で高い成長を達成できると信じている保守派の経済学者でもトランプが命令した成長率を飲みこむことは難しい。例えば、先月開催された米国経済学会の座談会で、コロンビア大学のハバード教授(G.W.ブッシュ政権下のCEAの委員長)は、今後の成長率は高くても2.75%であろうとした。多くの経済学者はそれでも超楽観的であるとコメントした。

 選挙期間中、トランプは経済学者を軽蔑していると公言した。そして、先日、閣議メンバーからCEAの委員長を外すという決定をしたことによってこのような経済学者無視のスタンスを一層明らかにした。トランプが経済学の法則を無視し、成長や雇用、貿易などに関して楽観的な見通しを行うことにはリスクも伴う。それは、トランプに投票した国民はあなた(トランプ)が約束したことを覚えており、もし、公約を実現できなかった時にはあなたを罰するということである。たぶん、その時にはトランプチームは選挙でトランプに投票した人の記憶を覆い隠せるのではないかと期待しているのであろうが。
出 典:Catherine Rampell ‘The Trump White House is already cooking the book’(Washington Post, February 20, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-trump-team-is-already-cooking-the-books/2017/02/20/a793961e-f7b2-11e6-be05-1a3817ac21a5_story.html


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