世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月17日

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 米外交問題評議会上席研究員カーランツィックとスナイダーが、同評議会のブログの2月16日付け記事で、金正男暗殺は衝撃であるが、マレーシア等は何のために同人を自由に出入りさせていたのか等謎は深まるばかりだ、と述べています。要旨、次の通り。

(iStock)
 

 金正男の死は衝撃的である。金正男は2012年北朝鮮が金正恩体制に移行した頃、その持続性につき疑念を呈していた。恐らくこの批判を金正恩は個人的な批判と捉えたのであろう。他方、両者の間には個人的な面識はなかったとの指摘もある。

 金正男は10年以上海外で亡命生活をしており、粛清された張成沢や金敬姫と連携していたと言われる。絶大な権力を持っていた張成沢を粛清するくらいだから金正男暗殺は驚くべきことではない。金正恩が以前から金正男殺害の命令を出していたとの報道もある。

 北朝鮮は世襲制であるが、金正恩には男の跡継ぎは確認されていないので、金正恩に何かあった場合金正男が中国の支援の下に権力掌握に動く可能性もあった。金正男を排除しておけばその可能性はなくなる。

 北朝鮮にとり暗殺は従来から行われてきたことである。1997年金正日は韓国に亡命した親戚の者を暗殺した。しかし暗殺は簡単にできるものではない。リスクがある。金正恩は自らの体制を強化するためには他の方法はないと考えたのかもしれない。

 暗殺は東南アジアの国々との関係で疑問を提起する。北朝鮮は長年マレーシア、シンガポールと関係を維持してきた。最近金正男はマカオよりはこれら両国で長い時を過ごしていたと言われる。中国の支配下にあるマカオで暗殺し中国を怒らすよりもマレーシアで暗殺する方が政治的に良いと考えたのであろう。

 しかし、マレーシアとシンガポールは、なぜ金正男の自由な入国を認めていたのか。北朝鮮は東南アジアの幾つかの国と外交関係を持っているが、マレーシアと北朝鮮は最近査証なし往来に合意していた。金正男は2014年頃からマレーシア、シンガポールに屡々渡航、滞在していたと言われている。なぜか。マレーシアにとっての利益は何か。北朝鮮の工作員がミャンマーやタイで問題を起こしていたことはマレーシアも知っていたはずだ。

 貿易の利益はあるだろう。しかし、両国の貿易は限られている。北との貿易を増やしたいと言っても金正恩にとって脅威と見られている金正男をなぜ自由にさせていたのか。情報が出れば出るほど謎は深まるばかりだ。

出典:Joshua Kurlantzick & Scott A. Snyder, ‘The Death of Kim Jong Nam’(Council on Foreign Relations, February 16, 2017)
http://blogs.cfr.org/asia/2017/02/16/death-kim-jong-nam/

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