2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年6月2日

 中国で80年代に本格化した改革・開放政策とは、沿海部の大企業が貧しい農民工を安い賃金で搾取し、その工場ででき上がった安価な製品を世界中に輸出して効率的に高収入を得るという、成長モデルを発展させてきたものだ。いわば「格差」があるからこそ、高度経済成長が可能になるというモデルは、「富士康」事件を見る限り、限界が来ていると言えよう。

 『経済参考報』(5月21日付)は、世界銀行の報告として「中国では1%の家庭が全国の41.1%の富を掌握しており、富の集中は米国をはるかにしのぐ」と指摘したが、「天上人間」と「富士康」の両事件は、前者では「権貴階層」、後者は「農民工搾取工場」という一握りの富裕層がクローズアップされた。

 その歪んだ存在を支えたものこそ、「黒色・灰色収入」「血色収入」だった。こうした事件にメスが入ったことで、中国がより公平かつ正義ある社会に生まれ変わるか、注目する必要がありそうだ。

 

※次回の更新は、6月9日(水)を予定しております。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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