世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月3日

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 オックスフォード大学ペンブルック・カレッジのケンドール研究員が、2月28日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説にて、イスラム国(IS)の戦闘員がシリアやイラクからイエメンに流入、アラブのアルカイダ(AQAP)と合流するなどして、イエメンがジハーディストの巣窟になる危険性を指摘しています。要旨、次の通り。

イエメンの首都サナア(iStock)

 イエメンは、イラクとシリアから逃れたISの兵士にとり理想的な避難先である。ホーシー派とハーディ大統領の政府との間の戦争は、宗派間闘争の様相を深めている。サウジのハーディ大統領側に立った関与、イランのホーシー派の叛徒への限定的な支援は、ジハード戦士好みの憎悪をかき立てている。

 さらに、イエメンの起伏に富んだ地形、リヤドにいる亡命政府が残した治安上の真空、国内避難民が東に移動したことによる部族社会の絆の弱体化、密輸ネットワークの横行、長大で隙だらけの海岸線がある。その結果、ISIS戦闘員が逃げ込み得る不安定のポケットとなっている。
既にイエメン内で活動しているIS戦闘員もいるが、アラビア半島のアルカイダ(AQAP)が、数、影響力、訴求力の面で優位である。

 AQAPの漸進的なアプローチは、ジハード戦士のイデオロギーを吸収する素地を作った。ISISと異なり、AQAPはカリフ国を強要しようとはせず、地元民の保護者であるかのように見せかけることで、イエメン南部で影響力を構築した。多くの資金を集め、部族民兵との同盟を強化し、水問題や電力供給の解決を含む地元の支持を集めるようなプロジェクトを実施した。AQAPが築いた政治的・文化的資本は消えず、AQAPを支える思想を爆撃で消すこともできない。

 イエメンでの紛争はイスラム原理主義の武装勢力へのアピールを強めている。ISISの司令部から帰ってきたイエメン人戦闘員が同志を連れてくることが懸念される。

 いくつかのシナリオが考えられる。

 第一に、ISISがイエメンを拠点に再建を始め得る。ただし、AQAPの優位、浸透ぶりを考えると、ISISが凌駕するのは難しいかもしれない。第二に、ISISの戦闘員のイエメンへの帰還は、ISISとAQAPとの間の既に存在する直接的な対立を悪化させ、イエメンの不安定を悪化させ得る。第三に、ISの戦闘員がAQAPと統合し、数を増やすかもしれない。結局のところ、両組織はイエメンのシーア派に対する戦いをするという目標を共有している。

 既に、統合の可能性を示す兆候がある。ISとAQAPはal-Bayda行政区におけるホーシー派と同じ戦線で戦っている。さらに、ISより漸進的なAQAPのイデオロギー的指導者たちがUAEの支援を受けた地上軍と米の無人機攻撃に狙い撃ちされ続ければ、ISのより過激なブランドが採用されることになり得る。

 ISは、イエメンにおいてAQAPと混合し得る。紛争が長引くほど、ジハードの培養地はより肥沃になる。

出典:Elisabeth Kendall,‘War-torn Yemen may attract jihadi fighters from Syria and Iraq’(Financial Times, February 28, 2017)
https://www.ft.com/content/3d598142-fc43-11e6-8d8e-a5e3738f9ae4

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