家電、携帯電話、半導体……かつて日本のお家芸だったものが次から次へと競争力を失った。こうなったのは日本企業の人事制度にも一つの要因がある。
まずはなんといっても実力主義の組織ではないことが問題だ。歳を重ねるだけで偉くなり決定権限をもつ……世界を舞台にライバル企業としのぎを削っていかなければならないのに、こんな人事制度では戦いに勝てるわけがない。
物の売買はリアル店舗からインターネットへ、自動車は人が運転しなくてもよい自動運転車へと進化を遂げようとしているように、世の中は常に進化し、次々に新しいものやサービスが誕生する。企業はそうした環境の変化にすぐさま対応していかなければならない。
一般的に高齢者より若い世代のほうが、新しいものに対する関心は高いだろうし、拒否感は少ないだろう。社内でのしがらみも高齢者より少ないはずだ。
そうした中で、年功序列で歳を重ねると偉くなり、決定権限をもつというのは弊害が大きい。
リストラ悲観論だけでは更なる悲劇を生む
かつて私が勤めていたテキサス・インスツルメンツ(TI)では40~50歳が一つの区切りとなっており、
①今後もTIで昇進する人
②会社に残るが給与も待遇も下がる人
③リストラ対象の人
の3パターンに分けられた。
40~50歳が事実上の定年となることにより、常に若い従業員が力を発揮できるようになっていた。こうした仕組みはTIに限ったことでなく、他の米国企業でもよく見られる。こうした話を日本ですると、「40~50歳でクビにするなんてかわいそうだ!」となり、それ以上話が進まなくなる。だが本当にそうだろうか?
組織の若返りを図らず、年功序列で上位ポストに上り詰めた高齢者が中心となって経営しているような組織はいずれ経営がもたなくなる可能性が高い。そうなると結果として大量のリストラが発生する。机上の空論でもなんでもなく、日本で頻繁に発生していることである。
「お前は出世したからそういうことが言えるんだ!」というお叱りを受けそうだが、実は私は③のパターンに該当した。つまりTIから「必要なら就職の斡旋(あっせん)をする」等と言われてリストラされた人間だ。
適材適所という言葉があるように、会社に残って出世をする①のパターンの人材のみが優秀かといえばそうとは限らない。TI時代の晩年は、社長レースに敗れたこともあり、そのまま会社に残っていれば、閑職に追いやられ特に仕事も与えられなかっただろう。