WEDGE REPORT

2017年5月14日

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 トランプ米大統領による連邦捜査局(FBI)のコミー長官の電撃解任で、焦点になっているのが「忠誠心」という言葉だ。トランプ氏が部下に忠誠心を求めるのはよく知られるところだが、ロシア関連疑惑の捜査を続ける長官には忠誠心のかけらもないと思ったはずだ。だが、解任は逆にトランプ氏への不信を生み、捜査の正当性がかえって高まるという結果になっている。

解任の本当の理由

(iStock)

 ホワイトハウスは当初、解任が「司法長官、副長官の勧告に従った決定」とし、大統領選でトランプ氏と戦った民主党前大統領候補のクリントン元国務長官のメール使用問題に関する捜査終了など、コミー氏の不手際を解任理由に挙げた。大統領主導ではなく、あくまでも司法省の勧告に応じただけという形にしようと図ったわけだ。

 しかし大統領はその1日後、米テレビに対して「勧告に関係なく、元々解任する考えだった」とあっさりホワイトハウスの説明を否定し、そのことを指摘されると、「ホワイトハウスの記者会見をやめ、文書配布の形にしてもいい」と開き直った。

 本当のところ、今回の解任の理由は主に2つだ。1つは、オバマ前大統領がニューヨークのトランプタワーの会話を盗聴していたというトランプ氏の主張をコミー長官が「そうした証拠はない」ときっぱりと否定したこと。ニューヨーク・タイムズによると、コミー氏はトランプ氏の盗聴発言を「常軌を逸している」と漏らしていたとされる。

 もう1つは、コミー長官が4月の上院公聴会で、大統領選挙期間中、トランプ陣営の幹部らがロシアと接触していた疑惑について、FBIが捜査していると衝撃的な証言を行ったことだ。トランプ氏はこの疑惑について、「でっち上げ」と決め付け、捜査を「税金の無駄遣い」と非難してきており、長官の証言はこうした大統領のメンツをつぶすものだった。

 トランプ氏は長官が目立ちたがってスタンドプレーをしているとペンス副大統領ら側近に罵り、司法長官らに合理的な解任理由を見つけ、手続きを進めるよう指示したと伝えられている。

 FBI長官の任期は10年と法律で決まっている。というのも、公正な捜査指揮を求められる長官は政治的な人物ではなく、独立性と中立性を担保される必要があるからだ。時の大統領はいかなる理由であっても解任することはできるが、オバマ前大統領に任命されたコミー氏については、トランプ氏が留任させたいきさつがある。

 トランプ氏は公式には認めていないものの、コミー長官が選挙戦終盤の10月、クリントン氏のメール問題の再捜査を発表したことが、トランプ氏の当選に決定的に有利に働いたのは確実で、その論功行賞として留任させたと見られてきた。

執拗に忠誠心を要求した大統領

 ニューヨーク・タイムズは解任に至った“前兆”がトランプ政権発足直後の1月27日にホワイトハウスで行われた大統領とコミー長官の夕食会にあると報じている。長官寄りの関係者によると、この夕食会は大統領からの求めで実現した。

 トランプ氏はこの席で、自分に忠誠を誓うよう要求。長官は忠誠を誓うことを躊躇し、その代わりに「大統領には常に誠実であるつもりだ」と返答した。しかしトランプ氏はこの答えに満足せず、忠誠心が必要だとあらためて求めた。長官は再び真っ向から答えることをためらい、「誠実さ」を強調した。

 これに対し、トランプ氏は「誠実な忠誠心」をさらに求め、長官は「そう思っていただいて結構」と返答した、という。トランプ氏は部下に絶対的な忠誠心を要求することで知られており、一部のアナリストは「同氏の人間関係には3つのカテゴリーしかない。家族か召使いか、それとも敵対者かだ」と指摘している。

 このカテゴリーから言うと、部下は忠実な召使いであり、コミー氏も当然、こうしたトランプ氏の哲学に従うことが要求されたわけだ。しかしトランプ氏はその後、そもそも会合を求めたのはコミー氏の方からであり、忠誠心の問題は出なかったとこの報道を否定した。

 トランプ氏はさらにツイッターで、2人の会話を録音したテープの存在を仄めかし、コミー氏がメディアに情報をリークしないようクギを刺した。トランプ氏はコミー氏がFBI長官に留まりたいと大統領に懇願したとしており、この様子を収めた録音テープではないかとの憶測も呼んでいる。

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