WEDGE REPORT

2017年6月1日

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田中淳夫 (たなか・あつお)

ジャーナリスト

静岡大学農学部卒業。出版社、新聞社を経て、主に林業を中心に取材・執筆。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。

 ジビエ(野生鳥獣肉)が注目を集めている。政府もジビエ利用拡大の旗を振り、各地で事業化の動きが目立つ。獣害を引き起こすシカの駆除をジビエの普及によって促進しようという発想だ。

 その最前線に位置する兵庫県丹波市で、シカ肉の販売・流通を手掛ける丹波姫もみじに到着したのは3月上旬の朝だった。柳川瀬正夫社長に話を聞こうと思った途端、事務所の前に軽トラが止まった。荷台には大きなニホンジカ。胸が赤く染まっている。

シカ肉の販売・流通会社「丹波姫もみじ」に運び込まれたニホンジカ
(写真・ATSUO TANAKA)

 さっそく社員が集まって、食肉処理場に運び込む。重さを量ると70キロを超えた。「これは大物だな」。そんな声が響く。持ち込んだ人によると、畑に仕掛けたくくりワナに掛かっていたのだそうだ。まだ仕留めて30分と経たない。その後も次々とシカが運び込まれた。猟期中は1日10頭以上持ち込まれるという。

 「もっとも多い日は26頭だったかな」というのは、解体を担当する足立利文さん。1頭の皮を剥ぎ内臓を抜くまで10分くらいだという。その後冷蔵室で約1週間熟成させてから肉の部位を切り分ける。

 丹波姫もみじの昨年の処理数は、約1800頭にのぼる。ニホンジカ専門の処理施設としては日本最大級だ。ジビエブームに乗って急成長か……。

 「全然、利益は出ません。一時は廃業を考えたくらいです」

 意外や柳川瀬社長の口調は重かった。シカ肉ジビエの現状はどうなっているのか。

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