WEDGE REPORT

2016年12月7日

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井上久男 (いのうえ・ひさお)

ジャーナリスト

1964年生まれ。88年九州大学卒業後にNEC入社。92年朝日新聞社に転職。主に経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。近著は『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)。

 有田焼が1616年、日本最初の磁器として誕生以来、今年がちょうど400年の節目にあたる。産地では様々なイベントが開かれてきたが、その中でひときわ目を引くのが主に欧州市場を狙った、有田焼の新ブランド「2016」プロジェクトだ。今年4月に開催された世界最大級のインテリアの祭典「ミラノ・サローネ」にも出展した。

磁器発祥の地・有田で創業260年余の源右衛門窯(写真・WEDGE)

 有田焼の産地を抱える佐賀県は13年度から4年間、17の「400年事業」を推進している。「2016」のプロジェクトもその一つで、県費を3・8億円投入したが、これまでとは補助の手法が大きく変わり、一律ではなく、自助努力して成果が出せそうな業者を対象にしたことが大きな特徴だ。

 有田で「宝泉窯」を経営する原田元氏は同プロジェクトのメンバーの一人で、現在は県陶磁器工業協同組合の理事長も務める。「これまで補助金を使ってきたが、産地活性化の成果はほとんど出ていない。主な原因は産地の勉強不足と甘えに他ならない。今回の補助金では、もらった後に産地がどれだけ自立していけるかも問われている。補助金がいかに雇用と税収の増加につながるかも県は狙っている」。

 これまでの多くの補助金が、イベントに出展する新商品の開発費の一部を対象としたが、今回は一切出ない。月商に相当する型代や交通費などのコストはすべて窯元が負担する。補助金は県が主導して開拓する海外での展示会開催費用などに充てられるのみだ。しかも新商品開発にあたって、参加メンバーを募集した際には、書類審査だけではなく面接でやる気を確認されたうえ、決算書もチェックされた。

ろくろ、下絵付け、本窯などの各工程を職人たちが分業する(写真・WEDGE)

 さらに、開発プロセスでは敢えて窯元の要望は採り入れず、県が指定したデザイナーと組み、徹底したデザイン主導で、現代の生活に合った商品づくりが求められた。プロジェクトに参加した窯元10社、産地商社6社にそれぞれにデザイナーが付いた。有田の伝統を否定するもの作りの一面もあった。「今の生産設備ではデザイナーが求めるものが作れない、生産量が確保できないといった課題も指摘され、窯元10社のうち2社がリスクを取って工場を移転した。そうした意味で産地の覚悟が問われるシステムに変わった」(原田氏)。

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