Wedge REPORT

2010年7月20日

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  しかし、現在の表示制度では表示の義務がある食品が限られていたり、また表示を免除されるものがあったりと、消費者の混乱を招きやすい。ここまで読んでお分かりの通り、我が国にはすでに多くの遺伝子組換え作物が輸入されており、多くの種類の食品加工の原料として利用されているが、「消費者はその実態に気づいていないことも、遺伝子組換え食品についての理解が進まない一因かもしれない」(先述の福冨氏)とのことだ。

  先述の食用油も表示が省略できる加工食品に該当する。遺伝子組換え作物を使用しても、その加工の過程で組換えによって導入されたDNA及びそれによって生じたタンパク質が残存していないような食品は表示が免除されている。それでも、表示をする場合には、「遺伝子組換え不分別」と表示しているものもある。

 「なぜ分けられないのか」と思うかもしれないが、「非遺伝子組換え大豆と遺伝子組換え大豆を分別して製品を製造するには、非遺伝子組換え専用のラインを準備しなければならない。それは50億円や100億円する工場を1棟建てるようなことで、現実的には不可能」(某食品メーカー)とのことだ。

 福冨氏はこう続ける。「わが国では、すでに多くの遺伝子組み換え作物を輸入してきている。この間に健康に影響を及ぼすようなことはなかった。この現状を、消費者のみなさんが理解を得ていただけるよう、国はもちろん私たちも遺伝子組換え食品についての正しい知識を伝えていく努力をしていかなければならない」。 

消費者にとっての「メリット」

 そして、「今の遺伝子組換え技術は、消費者にとってメリットがない(感じにくい)」という感覚も、遺伝子組換えを受け入れられない一因かもしれない。先述の飼料などは、消費者が直接口にするものではないから、なおさらそう感じるかもしれない。しかし、科学ライターの松永和紀氏は、「特に飼料は大量の遺伝子組換え大豆やトウモロコシを使うことによって、消費者が安く牛乳や肉を買うことができる。その恩恵を忘れてはいけない」と言う。

 ちなみに今の遺伝子組換え作物は「第1世代」と呼ばれるもので、除草剤耐性や害虫耐性など、主に生産者にとってのメリットが目立つものだが、「第2世代」と呼ばれる、健康維持や栄養価の高い遺伝子組換え作物の研究も進んでいる。分かりやすいところで言えば、花粉症を緩和する米は話題になっただろう。これらが実用化されれば、消費者にとってもかなり身近なものに感じられるだろう。

 遺伝子組換え作物の安全性やリスクを理解した上で、それでもやはり抵抗を感じる、という消費者は、もちろん可能な限り避ければよい。商社はまだ非遺伝子組換え作物を調達できているし、油は大豆やナタネを原料としないオリーブオイルなどを使えばよい。表示義務についても賛否両論あるが、やはり消費者が選択できるという観点から、今後も続けてもよいと感じる。正しい知識と理解を得た上で、自身が何を選択していきたいのか。与えられたものを思考停止の状態で受け入れるのではなく、一つひとつきちんと判断していってほしい。


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