2024年12月6日(金)

Wedge REPORT

2010年7月20日

 スーパーに並ぶ納豆や豆腐を手にとって見ると「原材料:大豆(遺伝子組換えではない)」という表示。これを見て安心して購入する消費者は多いだろう。「遺伝子組換えなんて怖くて食べたくない」「遺伝子組換え作物を食べたラットが死んだ」「環境破壊の原因となっている」。色々と言われてきた遺伝子組換え食品は、そのイメージからか、日本ではいまだに商用栽培はされておらず、消費者からは敬遠されたままだ。昨年にはハワイの遺伝子組換えパパイヤの安全性が日本でも問題ないとされ、今年中には流通するかもしれないということを知っている人はどれほどいるだろうか。

広大なとうもろこし畑(イメージ)。日本は、飼料用のとうもろこしは自給率0%だ。

 しかし、実は消費者が想像する以上に、遺伝子組換え食品は私たちの生活に根づいている。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によると、2008年世界の遺伝子組換え大豆の作付面積の割合は70%、米国農務省によればアメリカ国内では92%にのぼる。この大豆をはじめ、世界で栽培されている遺伝子組換えトウモロコシ、ナタネなどは、日本での自給率が低いものばかりのため、輸入に頼っている。そしてそれらは、油や飼料に使われることが多い。

 例えば、家庭で大豆油を使っているなら、その表示を見ていただきたい。「大豆(遺伝子組み換え不分別)」と書いてあるかもしれない。不分別とは、流通段階で遺伝子組換え作物と非遺伝子組換え作物を分けていないということ。ナタネ油もしかり、この2種の油は遺伝子組換え作物が使用されていることが多い。

消費者の不安と世界の栽培状況

 また、家畜の飼料にも遺伝子組換え大豆やトウモロコシがよく使われている。「家畜なら関係ない」と思う消費者も、牛乳や肉を食さない人はほとんどいないだろう。

 一方、豆腐や納豆の表示を見ると、「原材料:大豆(遺伝子組換えではない)」と書かれていることがほとんどだ。豆腐や納豆などは油や飼料と違い、原料をダイレクトに口にする印象が強いので、消費者たちは遺伝子組換え作物を敬遠しているのかもしれない。それを象徴するかのように、内閣府食品安全委員会が2008年に実施した調査でも、消費者の約65%は「遺伝子組換え食品に対して、何らかの不安がある」という結果だった。

 このように日本では、消費者は意識していないものの、油や飼料など見えにくいところですっかり定着している遺伝子組換え作物。しかし、一方で上記のような食品では遺伝子組換え作物が原料のものは避けられ続けている。主要商品に大豆を多く使用している食品メーカーの担当者は、「非遺伝子組換え大豆は、遺伝子組換え大豆と比較して価格は高いが、消費者ニーズに応えるために対応している。今のところ量もきちんと確保できているので問題ない」と述べる。しかし、将来的にこの状況が長く続く保証はない。

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