WEDGE REPORT

2017年6月2日

»著者プロフィール
閉じる

磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

 2017年3月の有効求人倍率は1.45倍と1990年11月以来、26年4カ月ぶりの高水準になった。今のままでは、日本が「人手不足倒産」に陥りかねない。日本の経済社会、地域社会を支える存在として「外国人」の役割を真剣に考える時が来ている。
Katie Edwards/Getty Images

 兵庫県豊岡市。円山川がもうすぐ日本海に注ごうという場所に城崎温泉はある。志賀直哉の『城の崎にて』で知られた温泉地は、柳の植わった大谿川(おおたに)沿いに木造の温泉宿が並び風情がある。

 ここ数年は日本人観光客に加え、そんな日本情緒を求める外国人観光客が増加。今では外国人客は年間4万人と、全体の5%超を占めるまでになった。

 その城崎温泉の旅館の最大の悩みが人手不足だ。客室係や、調理補助などの人手が足りない。旅館業組合が行ったアンケートでは、回答した旅館35軒のうち客室係が足りないと答えたところは77%。43%の旅館が部屋が空いていても人手が足りないために「売り止め」している実態が明らかになった。

 「大学の観光学科の卒業生など、日本全国から集めているが、それでも間に合わない」と老舗旅館西村屋の西村総一郎社長は語る。「特に問題なのがどんどん進む客室係の高齢化。このままでは早晩立ち行かなくなるのは明らか」と危機感を募らせる。

 そんな城崎の旅館業界が期待を寄せるのが外国人の労働力だ。ところが技能実習など従来の枠組みには「旅館の客室係」などは含まれない。昨年から「総菜加工」などで実験的にベトナムから実習生を受け入れ始めたほか、城崎温泉のまち会社「湯のまち城崎」が中心となって台湾とインドネシアの学生を「インターンシップ」として受け入れ始めた。今年4月には10人が来日、6月にはさらに10人がやって来る。学校の単位認定を前提とする実習という形で、半年から1年間滞在、旅館で働く。実習ということでお茶を濁しているわけだ。

 国は海外からの旅行者拡大に力を入れている。2016年は2400万人を突破、2020年までに4000万人を目指している。いわゆるインバウンドの拡充だが、そのためには旅館やホテルの整備・拡充が不可欠。にもかかわらず、旅館業界は人手不足に直面している。今年4月、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の青年部長に就任した西村氏は永田町の国会議員を回って、旅館業界への外国人労働者の解禁などを訴えている。

 政府が「突破口」にしようとしているのが国家戦略特区。すでに閣議決定した改正法案では、「クールジャパン人材」となる外国人を働き手として受け入れられる新たな枠組みができる。旅館での仕事を通じて日本の伝統を体得し、それを海外に伝えたり、海外からやって来る外国人旅行者に旅館を通じて日本文化を伝えるための外国人人材も、特区では労働ビザを取得できる可能性が出てくる。城崎はすでに特区指定されている兵庫県にあるため、県や豊岡市と協力のうえ、外国人受け入れに特区を活用していく方針だ。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る