WEDGE REPORT

2017年3月29日

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 「水や書籍など、かさばる荷物が増え、再配達も多いのでドライバーの負担は増している。毎朝9時から10時は業者間でマンションの宅配ボックスの争奪戦だ」

荷物の急増と再配達でセールスドライバーの負担は増している
(BLOOMBERG/GETTYIMAGES)

 ヤマト運輸のとある宅配ドライバーは、宅配現場の惨状を嘆く。国土交通省によると、2016年の宅配便貨物の取扱数は約38.7億個と6年連続で過去最高を更新。宅配ドライバー不足もあり、現状のサービス水準を維持するのが困難な状況になっている。

 クロネコブランドの宅配最大手、ヤマト運輸は時間指定などサービスの一部を改める方針だ。ヤマト運輸労働組合が、荷物の引き受け増加により、労使で締結している残業時間の上限がこの数年は守れなくなってきたとして、取扱荷物の総量を抑制するよう要請したためだ。会社側も提案を受け入れる方針で、創業以来ひたすら続けてきた「お客様第一主義」拡大路線の軌道修正を迫られている。

 宅配荷物が急増した背景には、アマゾンジャパンなどを通して購入するネット通販の急増が挙げられる。当初は書籍の宅配から始まったが、現在はあらゆるものを取り扱い、ネット通販では断トツの伸びを見せている。

 09年に当日配達サービスを開始、10年には日時指定サービスを始めるなど、利用者の便利さを追求、配送スピードの速さがアマゾンの武器になっている。こうしたサービスもプライム会員(年会費3900円)になれば無料で受けられる。その配達はヤマトなど宅配業者に委託している。

 アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は、2月の日本記者クラブでの講演で、「品ぞろえの強化、低価格、利便性の3つの柱が重要。その中で配送スピードは最も重要な戦略の一つだ」と、今後の戦略を語った。筆者が顧客サービスについて「これ以上の速いサービスも行うつもりか」と質問すると「イノベーションが進めばさらにスピードアップするのは可能。それを進めるか否かは顧客次第だ」と答えた。

 ヤマトは現在、最大の荷主であるアマゾンと配達サービスの見直しについて協議をしている。宅配サービスはこれまでは「送料無料」が当たり前になっていたが、これからは圧倒的な人手不足と、残業時間の削減の観点から、このサービスは是正されるべきだろう。その際に、アマゾン側と利用者側に送料負担についてどこまで理解を得られるかがポイントになる。

 ネット通販の拡大や速達ニーズに対応するため、ヤマトは24時間「止めない物流」を目指し、1時間に最大4万8000個の荷物の仕分けができる総合物流センター「クロノゲート」を13年に東京・羽田に完成。この施設により約30%の省人化に成功した。

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