浜野 『カラフル』(1) のことから始めましょう。8月21日公開? 『河童のクゥと夏休み』(以下、『河童』)(2)が2007年7月の公開だったから、前作からちょうど3年経った。
今度も原作は小説。前回の『河童』も、児童文学作品が原作で。普通と違いますね。人気マンガをまずTVアニメにして、それを今度は劇場用にする――というのがまず定着した流れだと?
原 『河童』のときは、自覚的だったんです。マンガばっかりが、アニメになる流れが、ちょっといやだったんで。人気マンガありき、みたいな風潮が、ですね。だから、自分なりに違うやり方をなんか考えてみようと思って、日本の児童文学を読み漁ったんですよ。
浜野 原作にできる本を探して…。
原 ええ。この近く(渋谷)にあったんです、児童書の専門店が。そこによく来てましたね。
浜野 「クレヨンハウス」?
原 いや、そこにも行きましたけど、「童話屋」という専門店です。もう無くなっちゃったんですけどね。そこでよく本を買ってて、木暮正夫さん(2007年没)の『かっぱびっくり旅』も確か、その店で買ったんですよ。木暮さんの本は、ほかにもいいなと思えるものがありましたね。
『河童』から『カラフル』へ
浜野 最新作『カラフル』に出会ったのは、どんないきさつで?
8月21日(土)全国東宝系にて公開
原 『河童』のほうは、原作との出会いから数えたら、映画になるまで20年ぐらいかかりました。
僕は絶対に面白い映画になると思ってたんですけど、『河童』の企画をあちこちにもっていったとき、これをつくることは望まれていないと感じた。聞こえてくる言葉にけっこうガッカリするものが多かったんですよね。「いまさら河童? 河童でなくてもほかになんかあるでしょう」とか、「お金の匂いがしない」とかっていうのもあった。そこまで言われると潔くて、かえって気持ちいいなと思ったんですけど(笑)。
ともかくそれを、やっとつくり終えて。終わると虚脱状態になったんです。『河童』は僕にとって、実現させることが夢みたいな企画だったんで、夢が叶うというのはこんなに力が抜けるもんかって、思いましたけどね、そのとき。なんかやる気にならなかったんですよ。だから内田さんて人との約束がそれ以前になかったら、すぐ『カラフル』に着手できたかどうか、わかんないですね。
(2)『河童のクゥと夏休み』:江戸時代から現代にタイムスリップした子河童のクゥと、クゥを拾った人間の少年の交流を描く。原作は、児童文学作家・木暮正夫の『かっぱ大さわぎ』『かっぱびっくり旅』。文部科学省特別選定作品及び日本PTA全国協議会特別推薦作品に選ばれた。