『クレヨンしんちゃん』だからって 
なめんなよ、という気持ちで拓いた道

日本アニメの旗手・原恵一監督と語る 第3回


浜野保樹 (はまの・やすき)  東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

1951年生まれ。工学博士。コンテンツ産業や制作に関する研究開発に従事する。主な著書に『大系 黒澤明』(講談社)『偽りの民主主義』(角川書店)『表現のビジネス』(東京大学出版会)などがある。(財)黒澤明文化振興財団理事、文化庁メディア芸術祭運営委員ほか。

東大教授 浜野保樹のメディア対談録

映画やアニメ・マンガなど、日本の現代カルチャーに詳しい東大大学院の浜野保樹教授。このコラムでは、教授の幅広い人脈を生かし、メディアにまつわる人との対談を掲載する。

»最新記事一覧へ

*前回(第2回)から読まれる方はこちらからどうぞ

ともかく目立たなかった子供時代

浜野 じゃあここらで、原さんの人となりを。

 原さんは中学・高校の頃、いじめの経験があったというわけじゃないんですよね? 前作『河童のクゥと夏休み』、今夏公開の『カラフル』と、子供同士の人間関係を描いているわけだけど。

 いじめは受けなかったけど、僕はとにかくおとなしかったんで、あんまりクラスの中心にいるようなタイプじゃなかった。

 自分からあんまり目立たないようにしてたというか。だから、『カラフル』だと、主人公の真〔まこと〕の側に近い子供だったんじゃないかなと思うんですよね。まあ、学校行くのは全然抵抗なかったし、行きゃあ友だちもいたけど…。

浜野 真の友達で早乙女っていうおとなしい子が出てくるけど、顔が原さんに似てる。話し振りといい、あ、自分の分身として描いてるよって、僕はそう思ったけど。

主人公・真(右)と早乙女(左)
©2010 森 絵都/「カラフル」製作委員会

 いやいやいや。

浜野 あ、違うの? (笑)

 全然、そんなつもりはないですね。

浜野 わざわざそのために新しく設定したキャラなのかなって思ったくらい。原作読むと元からいたんで、それは違ったと思ったけど。

 早乙女くんは、とにかくだいじだぞとは思ってましたけどね、アニメ版において。

浜野 原さんの思いを代弁する…。

 まあ、理想ですよね。実際、自分が中学生だったとして、こんな、早乙女クンみたいな友だちがいたらどんなに救われるだろうとか。その理想型が彼なんですよ。

浜野 じゃあやっぱり、自分じゃない。そうでもないか?

 うーん、まあ、理想です。

携帯電話をもたないワケ

原監督の生き方は、極めてシンプル

浜野 業界ではあまりにも有名なんですけど、原監督は、電話はもたない。携帯電話、まだもってないの?

 もってないですね。

浜野 それはもう意地でももたない?

 いやいや、全然そんなことないです。僕、そんな「主義」とか、あんまりないんですよ。

 携帯なくても済んでるんで、わざわざもつのがめんどくさいっていうだけ。べつに主義主張じゃないから、そのうちもってると思いますよ。スタイルに信念があるわけじゃないんですよ。

 まあ、だけど、(世の中から)ずれてはいるんですけどね、いつもね。

浜野 意図的に?

次ページ 力んで時代の流れを追いかける必要はない

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「東大教授 浜野保樹のメディア対談録」

著者

浜野保樹(はまの・やすき)

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

1951年生まれ。工学博士。コンテンツ産業や制作に関する研究開発に従事する。主な著書に『大系 黒澤明』(講談社)『偽りの民主主義』(角川書店)『表現のビジネス』(東京大学出版会)などがある。(財)黒澤明文化振興財団理事、文化庁メディア芸術祭運営委員ほか。

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍