原 いや、意図的じゃないです。めんどくさいんですよ、とにかく。
レコードからCDになったときも、なんで変えないといけないんだ、みたいな気持ちがあって。けっきょくレコードはどんどんなくなっていっちゃうし、じゃあしょうがないからCDにしようかって切り替えたら、たしかにこっちのほうがいいよねって思った。小さいし、音もいいし、飛ばないし。
でも、昔から新しいのに飛びつきたいって気持ちが、まずあんまりなかったですね。
浜野 それは批判的に見てたっていうわけじゃなく?
原 多少あるかもしれないですね。なんでそっちにいかないといけないんだよっていう。
流行に合わせないといけないっていうのは、自分の意思じゃなかったりするわけですし。
浜野 僕、原さんと道具のことでいちばん印象に残ってるのは、誰かと一緒にしゃべってるとき、「野菜の皮むき器って便利だよね」て言ったら、原さんが「包丁でいいんだ、潔くないんだ」って言った。
道具を増やしてしまうということ自体、原さんはそんなふうに思ってるんだって感じた。
そういうところ、すごく映画によく出てる。シンプルに生きていけるんだったら、そっちのほうがいいやっていう。
原 うん、シンプルがいいですね。よけいなものは要らないと、ずっと思って生きたいですけどね、これからも。
浜野 それはどうしてそう思ったの。
原 きっかけがあったわけじゃないんですよね。ずっとそんな感じでしたよ、子供のころから。
浜野 そんな子供、いる? やっぱり何か欲しいとか、思うじゃない。
リュック1つで生きていけるんだ
原 ああ、子供のときは、あれが欲しい、これも、とかはありましたけど。
大人になってから、東南アジアをひとりで旅行してた時期があって、そこから帰ってきてから、よけいそう思うようになった気がしていますね。
リュック1つで毎日生活してたんで、それでも生きていけるんだよな、よけいなものは何も要らないって思った。
その旅行から戻ってきて、なるべくよけいなものは身の回りに置きたくないなって、強く思うようになりましたね。
浜野 それ、すごくだいじで。
僕、人生のなかでお付き合いさせてもらった人の中で、『緋牡丹博徒』シリーズ撮った加藤泰監督とか、影響受けた人がいるけど、最近だと、原さんにいちばん影響を受けた。モノにこだわらない生き方をしたい、と。
原さんの人生って、ストレートじゃなかったでしょう。そのことがすごく原さんの映画にも出ててね、まず高校からして、望む高校に入れなかったし、小さい頃先生には「死んだ魚の眼をしてる」なんて言われたりさ(笑)。
原 小学校のときですよ。ひどいですよね(笑)。