人生につまずいたとき、現代より厳しい時代を生きた先人の姿に勇気づけられることがあります。次の一手に迷ったとき、新しい時代を切り開いた賢人の知恵にヒントが得られることがあります。だからこそいつの世でも通じる普遍的な事柄が求められるのです。「古典」と聞けば難解で、頁も膨大で読みづらいイメージがあります。読んでみたものの内容がよくわからなかったということもあります。そんな理由で古典の叡智に接する機会を逸している人が多いというのは実にもったいない話です。ウェッジブックスが刊行した「超約版」は訳者による意訳も交え、わかりやすい現代語にした抄訳シリーズです。本シリーズを読むだけでも原文のエッセンスが習得できるよう配慮しています。ここではコロナ禍にある日本人がぜひ読んでおきたい3冊をご紹介します。

 

1 超約版 貞観政要

呉兢・原作 夏川賀央・訳

 
 
超約版 貞観政要

呉兢・原作 夏川賀央・訳

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唐2代皇帝・太宗による政治の要諦『貞観政要』。世界最古・最高のリーダー論として今の世でも読み継がれる帝王学の名著です。

日本でも執権北条家、徳川家康、明治天皇らも参考にしていたことが知られています。

「組織の力量はリーダーの器以上にはならない」

「部下からの厳しい言葉にこそ耳を傾ける」

「安易に戦いを選ぶほど、馬鹿げた解決方法はない」

「後継者の育成こそ組織の最優先課題である」…

太宗と家臣たちのやり取りの中で『貞観政要』が示してくれるリーダーシップの要諦は、時代を超えて通用する組織運営のための普遍の原理でもあります。

コロナ禍に見舞われ、海の向こうでは戦争も勃発した混迷の時代に、自分や組織の立ち位置を見直し、リーダーとして先を見て率いていくためにも必読の古典といえるでしょう。

 

2 超約版 方丈記

鴨長明・原作 城島明彦・訳

 
超約版 方丈記

鴨長明・原作 城島明彦・訳

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「ゆく河の流れは絶えずして…」の出だしで知られる『方丈記』。命のはかなさを川面に浮かんでは消えゆく泡(うたかた)に喩え、鴨長明独自の「無常観」を表した作品として知られています。

そんな名作が800年の時を経て、いま再び注目されています。それは令和に入り、コロナ禍で昨日まで元気だった人が今日はあの世へ旅立つ「無常の時代」に直面したからです。

おまけに国内では地震、暴風、豪雨、土石流などの自然災害が頻発し、国外を見れば戦争が勃発。長明が描いた平安末期から鎌倉初期の時代に非常に酷似しているのです。

不安に苛まれる日本人が多いなか、長明が書き記した不条理な世を生きる極意は、現代でいうところのミニマリストやリモートワーカーに通じるものがあり興味深いものがあります。

3年目に入ったコロナ禍を機に、『方丈記』にヒントをもらいながら「人生に本当に必要なものは何か」をじっくり考えてみるのはいかがでしょうか。

 

3 超約版 論語と算盤

渋沢栄一・原作 渋澤健・監訳

 
超約版 論語と算盤

渋沢栄一・原作 渋澤健・監訳

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2021年度のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公でもあった渋沢栄一は、2024年から新1万円札の肖像になる予定です。

最初は農民だった栄一ですが、その後は尊王の志士、幕臣、明治政府の官僚を経て、実業界入り。幕末から昭和初期の変革期に、500以上の企業を設立し、600以上の教育・社会事業にも携わります。

栄一は常に「公益」と「利益」の調和を図り、商売は道徳によって成り立つと説いたことで知られます。その著作『論語と算盤』は刊行から100年近く経ついまでもビジネスリーダーに愛読されています。

世界がコロナ禍にあるいま、「元祖SDGs」の理念として再び注目される不朽の名著が、5代目子孫でコモンズ投信の会長である渋澤健氏によるわかりやすい現代語訳で、現代に蘇ったのが本書です。渋澤氏による、コロナ後を見据えたコメント付きの本書は、指針なき混迷の時代を生きるヒントになるでしょう。