<好評3刷>(2007年5月)
本書は、尾形光琳の奔放で華麗な生涯を、点描の手法(ある一日の出来事を積み重ねることによって生涯を浮かび上がらせる)で描いた小説です。京の豪商の次男に生まれた光琳は、若い頃から奢侈に明け暮れていましたが、父の遺産を手にすると、何人もの女性に子どもを生ませるなど遊興の限りを尽くし、やがて逼迫して弟の乾山にまで金の無心をする有様でした。そして放蕩の果てに妻を娶り、四十歳を過ぎて絵師としての出発をします。
パトロンの中村内蔵助との出会い、再びの借金まみれの暮らし、自宅を抵当に入れての江戸落ち、そして老境にいたっての帰洛――。その変転する人生の底に、「貧に候えども、心楽に致し度く候」と、絵に賭ける芸術家の真摯な情熱が脈打っています。
今業平と謳われた光琳の生涯を知れば、彼の絵にもまた新たな味わいを覚えるに違いありません。『紅白梅図屏風』など、光琳の代表作をカラー・ワイド判で多数収載。
【収載図版】(全てカラー・7点)
1 蝦蟇流水蒔絵硯箱
2 紅白梅図屏風
3 夏草図屏風
4 布袋図
5 中村内蔵助像
6 画稿美人図
7 燕子花図屏風
8 風神雷神図屏風