本書は、フランスの有名な文芸評論家で優れた歴史家でもあったアンドレ・モーロワが、第二次世界大戦の緒戦で「フランスがなぜ無惨にあっけなく滅びたのか」をテーマに、フランス首相、軍部の最高指導部、そして国民の心の動きを臨場感溢れる生き生きとした筆致で描いた古典的名著を復刊したものです。
昭和15年に刊行された邦訳は、3ヶ月後には実に200版と版を重ねる記録的な大ベストセラーになりました。
ドイツがわずか6週間でフランス全土を打倒し、全ヨーロッパはヒトラーの前にひれ伏しました。この出来事は当時の日本人に大きな衝撃を与え、日本は日独伊三国同盟の調印に踏み切り、太平洋戦争へと突入することになります。フランスの敗北はその後の日本の命運を左右する出来事でもあったわけです。
モーロワはフランス敗北の原因をつぶさに分析します。
そこには、隣国の脅威の前に手をこまねいていた政治家たちの腐敗・堕落ぶりが暴かれるとともに、民主主義国家が陥りやすい脆弱性が浮き彫りにされています。
巻末に新たに付した解説で中西輝政氏(京都大学大学院教授)は、「本書に描かれている内容は、実は現代の日本と日本人に非常に重大な問題を突きつけている」と強調しています。
本書が刊行されてから60年余、現在の日増しにつのる政情不安のなかで、本書の復刊は「頂門の一針」となるにちがいありません。