イラン系米国人で、イラン問題に詳しいジャーナリストのフーマン・マジドが、6月7日付けニューヨーク・タイムズ紙に論説を寄稿し、6月7日のテヘランでのテロ攻撃は、イランとサウジの勢力争いやテロとの戦いに大きな影響を与えるものであり、トランプ政権はイラン非難一辺倒ではなく、イランに対する政策を再考すべきである、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。
6月7日のテヘランでのテロ攻撃は、イランとサウジの勢力争い、テロとの戦いに大きな影響を与えるものである。
今回のテロ攻撃の対象となった2か所は、イランの敵が破壊したいと思っているのが何かを示している。
一つの対象は「イマーム・ホメイニ廟」であったが、ホメイニの政治イデオロギーは、イスラム国家はイスラム法学者によって統治されるべしとする「法学者の統治」で、これはスンニ派の思想の中核をなすサラフィー主義(シャリア(イスラム法)の厳格な施行を求める)と相いれない。ISの思想的根拠はサラフィー主義であり、「法学者の統治」の考えは受け入れられないとする。
もう一つの対象は国会議事堂であり、これはイラン式民主主義のシンボルであって、イラン式民主主義はやはりISとして受け入れられない。
これまでイランは国内のテロ対策には万全を期してきたと言われてきたが、今回のテロ攻撃は、イランのテロ対策に思いがけない弱点があったことを示すものである。
今回のテロ事件をきっかけに、イランとサウジの関係が軍事対決になりかねない恐れがある。トランプはイラン批判の発言をしたが、イランはイラクとシリアでISと戦ってきており、今回はISのテロの犠牲となった。トランプ政権はイランに対する政策を再考すべきである。
出典:Hooman Majd,‘What Happens in Tehran Doesn’t Stay in Tehran’(New York Times, June 7, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/06/07/opinion/tehran-attack-khomeini-mausoleum.html