2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2010年9月1日

若い世代から高齢者まで
「子縁」でつながる「秋津コミュニティ」

 「明日から2日間、学校でキャンプをやります。来週は学校の児童たちのお父さんや、地域のおじさんが子どもと巣箱を作る“工作教室”、それから卒業生のお母さんが勉強を教えてくれる“算数教室”もあります」。

小学校の余裕教室を使用している「秋津コミュニティ」。鍵の管理も、参加している大人たちが担当している。

 夏休み中にもかかわらず、学校で開催されるたくさんのイベントの予定を教えてくれたのは、千葉県習志野市立秋津小学校 秋津コミュニティ顧問の岸裕司氏。27歳の時に家族で秋津地区に移り住み、それから58歳となった今までずっと、住民の中心となって秋津を盛り上げてきた。

 「秋津コミュニティ」は、秋津小学校内に事務局を置き、校区の全住民と校区で働く人々を対象に生涯学習を推進している。学校の余裕教室を「コミュニティルーム」と名づけ、地域開放のハードスペースとした。「地域の人々が自分たちの好きなことをやれる場所」が学校であることによって、彼らは授業に参画し、子どもたちと触れ合う。「学社融合」が進むことで学校も地域も活性化し、そこに住む人々も元気になる。秋津地区には今好循環が生まれている。

 もちろん、最初から何もかもうまくいったわけではない。引っ越した当初の岸氏は、「こんな殺風景な町では子育てしたくない。早く引っ越したいね」と奥さんと話していたそうだ。当時は秋津小学校も「普通」の学校だったし、市域では旧住民と新住民との間でもめごとなどもあった。そんな中でも、一つ年下の奥さんは、生協などで地域の人々とつながりを徐々に深めていく。ある時岸氏は、奥さんの生協友だちとの会合に連れて行かれ、肩身の狭い思いをしたことで、「母さんたちがこうやって子どもを通じた縁をつくっているのに、夫たちは秋津に居場所がなく、ただ寝に帰るだけの場所なのだなぁ」と感じたそうだ。

 そして、岸氏は「子縁」を通した父親たちの地域での居場所作りを模索したいと考えながら、最初のきっかけとして「赤とんぼ子ども会」という子どもたちを対象とした自治会を作ることとなる。メンバーは、当時32歳だった岸氏と同年代のお父さんたち6人。そこでは、デザイナーのお父さんがポスターやチラシを作ったり、清涼飲料会社のお父さんが取引先から景品のおもちゃをもらったりと、自身の職業的なつながりやスキルを存分に発揮し、様々なイベントを成功させた。仕事で忙しい若い世代のお父さんたちには、出入りのゆるやかさを確保しつつ、具体的な作業などのきっかけを示したり、「子縁」を上手に使ったりすることで地域活動に引っ張り出せると確信したのだった。

 岸氏は「30、40代のお父さんがとても忙しいのは十分わかっている。それでも、会社は一生雇ってくれるわけではないし、今から定年後のことを考えるのは決して早くはない」と言う。自身も20代後半で起業し、それから忙しい毎日を送りながらも、「転ばぬ先の杖」として、地域とのつながりを絶やさないようにしてきた。

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