World Energy Watch

2017年7月20日

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 ロシアの米大統領選への関与を巡る疑惑を巡り緊張が続く米ロ関係だが、欧州のエネルギー安全保障、天然ガス供給の問題では米国とロシアの間で綱引きが続いている。圧倒的シェアを維持したいロシアと新たにシェールガスの輸出を開始し、シェア拡大を狙う米国。トランプ大統領も売り込みに熱心だ。プーチン大統領も天然ガス売り込みの邪魔になる米国の制裁措置の解除を求めている。米ロの合間を縫い、欧州諸国はロシアと米国への依存とは別の道を探っている。エネルギー供給は安全保障に係る問題だからだ。

(IgorBukhlin/iStock)

 欧州連合(EU)28カ国の一次エネルギー供給の22%を占めている天然ガスは(図-1)、二酸化炭素排出量が、石油、石炭との比較では相対的に低く、温暖化対策に果たす役割が大きいことから、これからも需要量が伸びると予測されている。いま、欧州内の天然ガス生産の大半は英国、ノルウェー、オランダが担っているが、今後生産数量の減少が予想されることから、需要量の伸びは輸入量の増加により賄われることになる。

 いま、EU向け天然ガス供給の30%は域内生産だが、2015年の第4四半期には輸入量の37%はEU加盟国ではないノルウェー、41%はロシアの国営エネルギー企業ガスプロムから供給されている。残りは、アフリカ、中東などからだが、最近米国のシェールガスの輸入も始まった(図-2)。

 今後需要増が予想される欧州向け天然ガス供給を狙っているのは、まずパイプライン経由で供給を行うため価格競争力を持つガスプロムだ。ドイツ、オーストリアの企業と組み、新たなパイプライン建設を計画している。シェール革命により天然ガス生産量が世界一になり、輸出余力が出てきた米国も液化天然ガス(LNG)の形で本格的な輸出開始を狙っている。液化のコスト、魔法瓶のような船で液化されたガスを輸送する専用船のコストを考えると価格は相対的に高くなるが、ロシアより信頼できる供給者として売り込んでいる。

 米ロの競争で価格が下落すれば、欧州諸国にとっては望ましいと思われるが、特定の供給源に大きく依存することの怖さを学んでいる欧州は強かにイラン、カタールなどからの供給を増やすことを計画している。エネルギー安全保障の問題をどのように考えれば良いのか、欧州諸国の取り組みを分析することは、中東に石油の80%以上、天然ガスの30%弱を依存している日本にも役立つ筈だ。

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