2024年11月23日(土)

World Energy Watch

2017年2月16日

 地球温暖化は人為的に引き起こされていないとの基本的立場に立つトランプ政権は、オバマ政権が進めてきた温暖化対策を反故にすることを明らかにしている。オバマ政権の温暖化対策の肝の一つは、発電部門からの二酸化炭素排出量削減を狙ったクリーン・パワー・プラン(きれいな発電所計画-CPP)だった。もう一つは、自動車の燃費規制(CAFE)だ。燃費が向上すれば、当然だが二酸化炭素排出量は削減される。発電部門と輸送部門は、それぞれ米国の二酸化炭素排出量の40%弱、30%強、合わせると70%を占める温室効果ガスの主排出部門だ。

 トランプ政権は、CPP、CAFEともに実効性をなくし、実質的に廃止する方針を明らかにしている。規制を撤廃しビジネスと雇用を拡大するとの政権の基本方針にも合致している。両規制共に環境保護庁(EPA)の管轄だ。EPA長官には温暖化懐疑論のスコット・プリュットが就任予定だが、どのように両規制を実質的に無効化するのか、まだ詳細な方法は明らかではない。 

イーロン・マスク氏(中央)と会談するトランプ氏(AP/Aflo)

 仮にCAFEが無効化されるとなると、ハイブリッド車、電気自動車(EV)販売には逆風になる。トランプ大統領誕生により規制が緩くなると見られたことからEV主体のテスラの株式は当然ながら下落した。大統領選直前には194.94ドルであった株価は、トランプ当選により、いきなり10ドル近く下落し12月上旬には181.47ドルを付け、黒字化した四半期業績による株価上昇分を打ち消してしまった。しかし、12月上旬からテスラの株式は一本調子で上がり始める。2月9日の株価は269.20ドルだ。

 なにがあったのか。テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスクがトランプ大統領にすり寄っていることが市場に評価されたのだ。マスクの事業はEVに加え、テスラが買収した太陽光発電事業、非上場のスペースXによる宇宙事業だ。政府の政策と補助金、公共投資の影響を大きく受ける事業ばかりだ。

米国のEV市場と新政権

 米国では電気自動車(EV)の販売台数が昨年37%増加した。と言っても、販売台数はわずか15万9139台、米国の昨年の販売台数1755万台に占めるシェアは1%に満たない。約30車種のEVが販売されており、1万台以上売れた車は、テスラの2車種、日産リーフなど5車種に過ぎない。

 EVが伸びない理由のひとつは、原油、ガソリン価格の低迷だ。米国での自動車販売における乗用車のシェアは下落を続け、40%を切ってしまった。乗用車のシェアを食っているのは、トラックに分類されるSUV、いわゆる4駆だ。いまワシントンDCに滞在しているが、街中では、日本では発売されていない日本メーカーのSUVを含め4駆を本当に多く見かける。多少燃費が悪くても、ちょっと郊外に出かける時に便利でお洒落な車がよいのだろう。


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