World Energy Watch

2017年5月12日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

 4月14日に、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)が発足した。この組織の会長は反原発運動に熱心な城南信用金庫の吉原元理事長が務めている。吉原氏は信金の理事長時代に城南総合研究所を設立し、自ら会長に就任した。小泉元首相が研究所の名誉会長として講演活動を行っている。

(iStock)

 吉原氏はネットで公開されているインタビューの中で、「原発に頼らない安心できる社会により経済は発展する」とし、「経済学の観点から原発はリスクが高く割りが合わない」と主張しているが、吉原氏の著書を読む限り、経済学について正しい基礎知識を持っているか疑わしい(「東電を反社会的企業と決めつける、働く人たちへの視点を欠く経営者」)。吉原氏は「正しい情報を伝えていく」とも主張している。是非そうして欲しいと思うが、発言内容からは正しい情報を発信しているかも疑問だ。

 原発をどうするのかは、日本のエネルギーコスト、ひいては経済成長、安全保障、気候変動対策に係ることになるので、正しい情報に基づき国民が判断すべき問題だ。反原発を主張するため正しい情報を伝えないまま、国民に判断を求めるのは間違いだろう。原自連が公開している動画を見ると、その主張の根拠は分からないことだらけだ。

 情報を収集せずに適当に発信しているのだろうか。あるいは、情報を知っていて、不都合な情報には触れずに発信しているのだろうか。どちらにしても問題だが、エネルギー問題について国民の判断を仰ぐ際には、全ての情報を正確に開示することが前提であり、主義主張のため歪曲することは許されない。

 原自連が主張する自然エネルギー利用の一つの方法として、ソーラーシェアリングがある。農地の上部に太陽光パネルを設置し、農業を続けながら農業収入以外に太陽光発電による収入を得る方法だ。4月3日に行われた千葉県匝瑳市のソーラーシェアリングの開所式には、小泉、細川、菅元首相が仲良く出席し、その少し前には民進党の蓮舫代表も視察に訪れている。元首相3人と蓮舫代表は、エネルギーに関する情報を正しく理解しているのだろうか。公開されている動画を基に、原自連の主張を検証してみた。

原発を止めて自然エネルギーが世界の流れ?

 世界の中で日本だけが、原発を止めて自然エネルギーを利用する流れから大きく取り残されていると吉原氏は述べている。どこのデータから出てきた話なのか全く分からない。まず、原発を止めるのは世界の流れというのは明らかに間違いだ。

 世界の既存、建設中、計画中の原子力発電所は表-1の通りだ。原発の新設を行う理由は国により異なる。電力需要の急増に応えるため原発の新設を行う国は、中国、インド、アルゼンチンなどだ。

 電力需要が急増し、表-2の通り、いまや世界一の発電量となった中国は、さらに電源を必要としているが、大気汚染と温暖化問題から石炭火力発電所の新設を積極的に進めることを躊躇している。

 日本では、低硫黄、窒素分の石炭を脱硫、脱硝装置を利用し燃焼しているが、多くの国ではコストアップを避けるため環境対応装置なく燃焼している。中国では、大気汚染問題への対応に原発あるいは再生可能エネルギーの利用が必要になっている。

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