World Energy Watch

2017年3月15日

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 国営企業を中心に中国企業は、財政危機に陥ったギリシャ、ポルトガル政府などが売りに出した港湾、送電・発電設備などのインフラに係る企業の買収を行っていたが、最近ではインフラに加え金融、ハイテク企業の買収にまで乗り出している。インフラ、産業基盤を外国政府系企業が保有することも問題だが、ハイテク企業となると将来の国と産業の競争力に影響を与えることになる。

1月中国浙江省義烏からロンドンに到着した貨物列車(GettyImages)

 中国企業への情報・技術流失を懸念したドイツ政府からは、昨年来買収を牽制する発言が行われていたが、今年になりドイツ、フランス、イタリアの3カ国政府が欧州委員会に対し、企業買収、進出に係る条件が平等でない中国系企業による欧州企業の買収を無条件で認めるべきではないとの申し立てを行った。中国企業は基本的に欧州企業を自由に買収可能だが、欧州企業が中国企業を買収する際には様々な制約条件があり、片務的、不平等と3政府は主張している。

 インフラ、不動産への投資も相変わらず続けながら、欧州での投資額を大きく膨らませ金融、ハイテク分野まで買収先を拡大している中国企業の爆買いに欧州主要国政府も懸念を強めている。中国の対外直接投資額は昨年日本を抜き去るほど急増している(図)。

送電線もガスパイプラインも買収

 欧州内で政府系機関がインフラ関係企業を売りに出せば、まず手を挙げるのは中国国営企業だ。既に、ポルトガル、スペイン、イタリアなどの発送電設備、ガスパイプラインなどのインフラを買っている(『欧州のエネルギーインフラを買い漁さる中国』)。

 ギリシャでは、中国の国営企業コスコ(中国遠洋運輸集団)が、2016年4月最大の港湾ピレウスの操業会社の51%の株式を2億8000万ユーロ(340億円)で買収したが、昨年12月には中国国営企業の国家電網がギリシャの国営電力会社が保有する送電線管理企業の24%の株式を3億2000万ユーロ(380億円)で買収した。港湾、送電線などのインフラは、かなりの確度で使用量と収益が見込める事業だ。手に入れられるインフラは何でも買う勢いのあるのは中国企業だけと言えそうだ。

 昨年12月には、英国の送電・パイプラインを保有するナショナル・グリッドが、1100万の顧客向け天然ガスパイプライン管理会社の61%の株式を、豪州の投資銀行マッコリ―、中国政府系ファンド・中国有限責任(CIC)などのコンソーシアムに売却することを決めた。売却額は36億ポンド(5040億円)、さらにコンソーシアムは18億ポンド(2520億円)の融資も行うことが決まっている。CICは10.5%の株式を今回取得予定だが、2012年にロンドン、ヒースロー空港の10%、英国最大の水供給・処理企業テムズ・ウォータの8.7%の権益を取得しており、明らかにインフラ投資を志向しているようだ。

 欧州のインフラ、エネルギー分野に関心があった中国だが、欧州への直接投資額の増加に連れ、中国の投資分野は金融とハイテク、先進的製造技術に移ってきている。投資対象国も南欧から英国、ドイツ、スイスなどに変わってきている。

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