世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月28日

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 ニューヨーク・タイムズ紙が「イランのパズル」と題する社説を6月26日付けで掲載し、トランプ政権のイラン敵視政策を批判しています。社説の要旨は次の通りです。

(iStock.com/Bullet_Chained/macrovector)

 米・イラン間の一時の雪解けは今や危険にさらされている。これはイランの領土的、政治的野心の結果であるが、トランプのサウジ好きの結果でもある。

 シリアで米・イラン衝突がありうる。米国もイランもIS(イスラム国)打倒の目標を共有しているが、相反する利害があり、ISとの戦いが成功する中、それは増加している。

 トランプ政権高官は、イランがアサドの助けを得て、シリアとイラクで領域支配を広げ、テヘランからレバノンまでの陸上通路を確立しようとしていると心配している。そうなれば、ヒズボラへの補給もでき、イランの地域での影響力も増す。トランプ政権がどう対処しようとしているのかが、問題である。

 シリアの内戦が2011年に始まって以来、イランはアサドの同盟者である。ヒズボラその他のシーア派勢力を配備し、アサドを支援してきた。イラクとシリアでは、イランの利益は異なり、イラクではISと戦うが、シリアでの焦点はアサド支援である。

 シリアで米国とイランの利益は最も鋭く対立する。イラクではほぼ一致する。米国とイラクの軍はモスルからのIS駆逐に成功したが、シリアでは、米国はアサドではなくシリアの反政府軍と組んでIS攻撃をしている。イラクにおけると同様に、ISとの戦いはうまく行っている。ラッカ奪還は近い。しかし勝利の見通しが米主導兵力とイラン・シリア勢力の新しい緊張をもたらしている。最近、米国はシリア軍機を撃墜し、イラン製の無人航空機2機も撃墜した。イランはISに対し、弾道ミサイル攻撃もした。

 ISのシリアでの支配領域は半減し、イラク、ヨルダンに接するシリア東部とユーフラテス川渓谷にIS戦闘員が集中している。米高官は、イランはIS掃討よりもこの領土の支配により大きな関心を持っているのではないか、イランとシリア軍勢力の存在は米国の支援する兵力がラッカに侵攻する邪魔になるのではないかと懸念している。シリアとイラクの西の砂漠で逃亡するIS兵士を殺害、捕捉する計画にも障害になる。

 この爆発寸前の状況にロシアが参入、シリア軍機撃墜に報復するために米軍機を標的にすると脅している。

 トランプはシリアでの拡大された戦争に入っていくのだろうか。心配がある。トランプはシリアについて内戦を終わらせる政治的解決を含め、包括的な計画を示していない。

 トランプのイラン敵視およびイラン政府との話し合い拒否は、米軍の使命をIS国打倒からイランの影響力拡大阻止に拡大する結果を招きかねない。これは危険である。イランは賢くマネージされるべき国であるが、どうしようもない敵とされるべきではない。

出典:‘The Iran Puzzle’(New York Times, June 26, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/06/26/opinion/iran-trump-syria.html

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