世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月24日

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 トランプ大統領が、オバマ前大統領が決断したキューバとの和解政策の一部を覆す決定を行ったことに対して、6月16日付のニューヨーク・タイムズ紙の社説は、疑義を提示しています。その要旨は以下の通りです。

(iStock.com/RoyFWylam/dvoriankin/sabelskaya/Dezein)

 トランプは、6月16日マイアミにおいて、対キューバ雪解け外交を後戻りさせる決定を発表した。その目標は自由なキューバの実現であると述べたが、真実は、彼の当選を助けたマイアミの亡命キューバ人に迎合するとともに、前任者オバマの重要な政治的遺産を覆す執念深い政治的行動の1つだった。

 トランプは前政権によるキューバへの一方的な譲歩を取り消すと宣言したが、それは、誇張であって、覆したのはその一部である。キューバ製のラム酒や葉巻の愛好者等にとっては一安心であるが、キューバへの旅行者やビジネスマンにとってはより状況は難しくなる。

 結局のところ、米国・キューバ関係は冷戦時代のようなより敵対的な関係に戻り、ラテンアメリカにおける米国の立場を害するものとなろう。

 新たな政策の下では、米国人は、もはや私的なキューバ旅行を計画することはできなくなる。米国企業や市民は、キューバ軍や秘密警察が支配するキューバ企業とビジネスを行うことが禁止され、これは、観光分野を含むキューバ経済の重要な部分に米国がアクセスできないことを意味する。

 トランプの政策は、歴史的に誤った基礎に基づいている。トランプは、その目的をキューバの指導者の弾圧を止めさせ、民主主義を採用し、経済を開放するよう強制することだと述べ、キューバの圧政の前に黙ってはおられず、オバマの短期間のデタントは、共産政権を強化し軍を豊かにしただけだと批判する。しかし、50年にわたるタカ派的な制裁は、反カストロ運動家が望むようなキューバの共産政権を追い出すような成果は何ら上げることはなかった。

 トランプの人権に関する突然の懸念をまともに受け取ることはできない。近年の大統領の中で、人権をここまで軽視し、プーチンやサウジ王家のように国民を虐待する独裁者の国々にこのように好意的に接した者はいない。

 ただ、言えることは、トランプの政策変更は、懸念されていたほどにはひどくなかったということであろう。双方の大使館は維持され、両国間の直行便は継続し、キューバ系米国人は、キューバに自由に渡航でき、親戚に送金することもできる。トランプの辛辣な言説からすれば、これは多少の慰めではあるが、他方、保健分野の協力、石油漏出の防止に関する共同計画、麻薬取締りに関する調整や情報交換といった懸案や、トランプが新たに敵視しようとしているキューバとの間の真に建設的な関係といった実質的問題は放置されたままである。

出 典:New York Times ‘A Cynical Reversal on Cuba’ (June 16, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/06/16/opinion/a-cynical-reversal-on-cuba.html

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