特別対談企画「出口さんの学び舎」

2017年7月31日

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ライフネット生命会長・出口治明さんが「歴史」や「教養」をテーマに、さまざまな有識者をゲストに迎える対談企画「出口さんの学び舎」。技術革新やグローバル化により変化の激しい現代で、ぶれない軸を持って生きていくために必要なものとは何か、対話を通じ伝えていく――。

佐藤優さん、出口治明さん

「ビジネスと相性のよい宗教じゃないと、残っていきません」

出口:お会いできることを楽しみにしていました。いきなり本題に入りますが、人はなぜ宗教を求めるのでしょうか?

佐藤:端的に言うと、死ぬからですよね。死んだ先のことがわからないから。でも、もっと重要なのは、近代に生きている人間は、宗教とは自覚していなくても、みんな宗教を信じていると思うんです。

出口:どういうことでしょう。

佐藤:一番近い宗教は「拝金教」。お金を信じている。

出口:お金はあったほうがいい、と。

佐藤:ええ。でも、何のためにあったほうがいいかとは、あまり考えません。

出口:確かに考えませんね。

佐藤:それと、もう一つは「出世教」ですね。とにかく上に行きたい。おそらく、霞が関の中央官庁の課長たちを全員集めて、「年収100万円減らすけれども局長になりたい人いる?」と聞いたら、全員手を挙げると思います。

出口:ハハハ。

佐藤:出世教と関係しているのは、「受験教」ですね。そのような宗教はたくさんあると思うんだけど、一番重要なのは、宗教という形をとらないと思うんです。

出口:というのは?

佐藤:戦前において、「国家神道」つまり伊勢神道は宗教ではありませんでした。日本臣民の慣習だった。だからみんなが神社に行かないといけないし、お札も取らなきゃいけない。そういう感じで事実上の国教にしちゃったわけです。

 そういう伝統的国家神道とか、拝金教とか、出世教とか、受験教が、日本にはうわ~っと浸透している感じがするんですよね。

出口:「戦後の日本で、なぜキリスト教が広がらなかったんですか?」という質問を受けたことがあります。

 僕は「戦後は、イスラム教も仏教もそんなに広がっていません。生活が豊かになって、普通にごはんが食べられるようになった。現世のいろいろな楽しいことがあるから、宗教はあまり流行らなかったんじゃないですか」と、いいかげんに答えた記憶があります。

佐藤:イスラム教もキリスト教も、戦後の日本でうまく根付かなかったのは、商売につながらないからですよ。実は、明治時代は結構イスラム教徒が多かったんです。なぜならイスラム教徒にはイスラム金融が使えたから。利息とか関係ないんです。

 私はいろいろな宗教を見てきましたが、ある程度ビジネスと相性のよい宗教じゃないと残らないんですよね。

出口:なるほど。

佐藤:もう一つの理由は、薩長土肥の中でエリートになれなかった青年たちが、明治維新のときにキリスト教に行っているんです。能力はあっても薩長でなければ、軍でも官僚でも出世しない。新島襄にしても、植村正久にしても、みんな佐幕派なんです。

出口:確かにそうですね。

佐藤:だから、今の日本のキリスト教は根付かないと同時に、政府に対してちょっと後ろ向きの姿勢を取る。左翼と右翼というよりも、明治維新の恨みがあるわけです。

出口:そこに理由があったのですか。

佐藤:意外とそういう要素は無視できないと思うんですよ。だから薩長が嫌いなんですね、日本のキリスト教は。

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