2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月2日

 今回のサイバー攻撃で、サイバー攻撃の脅威が一段と高まったことが明らかになりました。

 サイバー攻撃の問題は、国が対外政策の一環として使いうることです。

 世界の安全保障に大きなかかわりを持つ国々は、いずれもサイバー軍を持っています。米国では2005年3月に、サイバー戦争用の部隊であるアメリカサイバー軍を組織したことを公表しました。ロシアではロシア連邦参謀本部情報総局(GRU)のほか、ロシア連邦保安庁(FSB)などがサイバー戦に従事していると見られています。中国については、2011年5月、国防省の報道官が、広東州広州軍区のサイバー軍の存在を認めています。

 イスラエルでは、国防軍参謀本部諜報局傘下の8200部隊がサイバー戦の主力と言われています。

 北朝鮮は約7000人規模のサイバー軍を持っていると推測されています。

 これまでのところ、国レベルのサイバー攻撃については、特定の政治的目的のため行われるケースが目立ちました。米国とイスラエルが2010年、Stuxnetと称する不正ソフトウェアでイランのウラン濃縮施設をサイバー攻撃し、遠心分離機を破壊したことが典型的な例です。

 最近では2016年の米大統領選挙に関し、ロシアが米民主党の全国委員会のシステムに侵入し、幹部の電子メールなど大量の重要情報を盗み出したことがロシアによる米大統領選挙への不正介入であるとして問題化しました。

 しかし、サイバー攻撃が、このような政治的目的に限られず、軍事目的のために使われる危険は常に存在します。電力、鉄道などのインフラが狙われる危険は夙に指摘されており、さらにサイバーが、従来の兵器と同様に軍事作戦の一環として使われる可能性は現実のものと考えられるようになっています。米国では2011年に国防総省が「サイバー空間作戦戦略」を発表し、それに合わせて、サイバー兵器を武器弾薬のリストに加え、サイバー兵器を通常兵器と同様に扱うようになっています。

 サイバーは目に見えない兵器であるとともに、誰が使用したかの特定が容易でないので、戦力の比較、戦闘の形態の予測などが困難です。サイバー攻撃に対する抑止が可能かという問題もあります。

 サイバー攻撃の危険が高まるにつれ、サイバーを含む武力紛争は、新しい戦略論を必要としています。

  
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