英フィナンシャル・タイムズ紙が、6月2日付け社説で、中国のサイバーセキュリティ法は、個人の言論と思想を統制し、外国企業にとっての非関税障壁となるばかりでなく、中国企業の競争力を阻害し中国の経済的利益にも反する、と批判しています。社説の要旨は次の通りです。
中国は常に、世界で最悪のインターネットの自由の侵害者である。6月1日、施行されたサイバーセキュリティ法は、明らかに、市民の言論と思想の統制を強化することを目的としている。同法は、グローバル企業の中国での操業に障害となり、中国企業が世界で競争する能力も阻害することになろう。
同法は、共産党が国家の名誉を害したり、経済的・社会的秩序を乱したり、社会主義体制の転覆に寄与すると看做す、ネット上の如何なる情報も犯罪であると明記している。表向きは中国のインターネットユーザーのプライバシー保護が目的だが、実際は、インターネットにログオンする全ての個人を国家が監視する権限を強化し、中国で操業する全ての企業に監視の共謀を強いるものである。
同法の対象は、曖昧・広範囲であり、共産党の見解に反する情報を発信した者は殆ど誰でも起訴し得る。そうした情報を自分のサーバーに保管する企業も対象である。
同法は、中国で操業するグローバル企業にとり非関税障壁としても働く。中国で集めた全ての情報を中国のサーバーに保管するよう企業に求めることにより、政府は国内企業を有利にしている。中国における広範な知的所有権侵害(その多くは政府が支援している)を考えると、ソースコードを中国政府に渡すべしとの企業への要請は、効果的に彼らを市場から締め出すことになる。
今日、Alibaba、Tencent、Baiduといった中国のテクノロジー企業は、中国国内で巨人となっているが、世界的にはまだ「小人」である。グローバルな競争相手が世界で最も厳しい検閲により遠ざけられてきたため、彼らは中国で繁栄できたのである。
少なくとも、検閲はイノベーションを阻害し、中国のテクノロジー企業のグローバルな競争力を損なう。この法は、中国のテクノロジー産業の閉鎖性を悪化させ、国内企業の競争力を弱める。この法律で影響を受けるグローバル企業は、中国の立法者に、同法が間違っているばかりでなく中国の経済的利益に反すると一致協力して納得させるべきである。
出典:‘China’s cyber security law and its chilling effects’(Financial Times, June 2, 2017)
https://www.ft.com/content/60913b9e-46b9-11e7-8519-9f94ee97d996