中国は「サイバー安全保障法」を施行しました。その内容はインターネット上の情報統制法というべきものです。社会の安定、社会主義体制に悪影響を及ぼすインターネット上の情報拡散を処罰しようとしています。
我々自由民主主義国とは全く異質の政権
中国は、自由な情報の流通により社会主義体制、要するに共産党の支配が揺るがされかねないと危惧しています。これがこういう法を施行する背景でしょう。国民に隠し事をしなければならない、要するに情報の自由、言論の自由を抑圧しなければならない政権には、正統性はありません。中国の政権は自由な情報流通に対し脆弱性を持つこと、我々自由民主主義国とは全く異質の政権であることを、もう一度想い起すべきでしょう。
インターネットの普及によって、国民の情報アクセスが改善され、専制主義の国の民主化に資すると言う論があります。しかし、インターネットもサイバー空間も要するに道具であって、良い目的にも悪い目的にも使えます。独裁国や権威主義政権はこれをうまく使っています。サイバー攻撃、サイバー・エスピオナージ、産業スパイ活動などに、この新しい情報技術が使われています。
同時に、独裁国、権威主義の国はインターネットの情報拡散機能を統制するために苦労もしています。トルコも中国もそうです。
全体として社会がこれでどう変わるかは興味深い問題ですが、まだよく分かりません。
この社説は、今回の法が海外のテクノロジー企業の中国における活動を阻害することに懸念を表明しています。ソースコード(色々なプログラム作成の元になる機械言語ではなく、人間が判る言語で書かれたもの)を中国で活動する会社は中国政府に開示すべしとの要請がこの法にあると言いますが、例えばマイクロソフト社は、ソースコードは開示していません。したがって、今後、中国での活動がどうなるのか、よく分かりません。
今回の法は非関税障壁ではないか、自国企業優先策ではないかという議論はあり得ます。これはWTOで争うべき問題でしょう。ソースコードを開示している会社もあり、こういう会社にとっては今回の法の影響は小さいかもしれませんが、これらの会社が中国の言論統制に加担するのはあまり感心できません。中国企業が競争にさらされず弱体化するなど、経済的コストが中国側に生じることを理由に西側がこの法の問題点を一致して指摘することを社説は推奨しています。しかし、共産党支配体制維持のために必要ということであれば、中国側がそういう議論に耳を傾ける可能性はほぼゼロです。対抗措置をとるか、その内容をどうするか、を考える方が良いでしょう。
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