2024年4月20日(土)

こんな子 こんな時 こんな絵本

2010年8月26日

“ともだち”になるきっかけ

 改めて、“ともだち”って何か? と考えると、答えはなかなか難しいものです。人それぞれ、考えも違うことでしょう。それでも、世界を広げてくれる大事な要素であることは、確かだと思います。そんな、“ともだち”は、どうしたら、できるのでしょう? 今まで出会い、関わってきたともだちを思い浮かべたとき、「あの日、あの時」とはっきりしている場合もあれば、気がついたらともだちになっていたというくらい、ささやかな事の積み重ねである場合もあります。むしろ、その方が多いような気がします。

『コッコさんのともだち』(福音館書店) 片山健 著・イラスト 内気な子に特におすすめの一冊。

 コッコさんとアミちゃんの場合は、着ていた服の色が同じだったことが、ともだちになるきっかけでした(『コッコさんのともだち』(福音館書店))。みんなと遊べず、いつも一人で部屋の隅にいたコッコさんは、ある日「二人ずつ手をつなぎましょ」と先生に言われたとき、同じようにだれとも手をつなげず一人ぼっちでいるアミちゃんを見つけました。あれ、おんなじ色の服を着ています。もじもじしていた二人が、お互いの服に触って、そうっと手をつないだら、うれしくなって、ふたりでいるのがうんとうれしくなって、いつもいっしょに過ごすようになりました。やがて、はじめてけんかしたことで、他の子とも遊べるようになります。けんかすることも、ともだちの輪を広げることになったんですね。コッコさんは、アミちゃんとも遊ぶし、みんなとも遊ぶし、もう一人ではなくなったんです。

 しっこさんとわたしの場合は、『あのときすきになったよ』(教育画劇)と、印象深い出来事がありました。わたしは、クラスでちょっと浮いた存在のしっこさん(本当の名前はまりかちゃん)と、ともだちというほどの関係ではありませんでした。しっこさんというのは、おしっこを漏らしてばかりいるからついた呼び名です。でも、わたしがおしっこを我慢しきれなくなった窮地を、何も言わずに救ってくれたのは、しっこさんでした。誰にでもできることではない、思いがけない行動で、わたしへの思いを示してくれたしっこさん。二人の関係は、より深まっていくことを感じさせる結末が続きます。

1時間100円でともだちに!?

 それにしても『ともだちや』(偕成社)を初めて読んでときには、ショックというか、その発想にびっくりでした。「一時間100円で、ともだちになってあげる」。幟をふりふり「えー、ともだちやです。ともだちはいりませんか」と歩いていくキツネに、「ともだちって、こんな風にして作るもの?」と眉をひそめた大人が多い中、子どもたちには、最初から大好評!「ともだちや」ではなく「おい、キツネ」と呼び止めたオオカミと過ごした時間は、実はともだちになるきっかけだったのです。お代を求めたキツネに「ともだちから金をとるのか。それが、ほんとうのともだちか」と牙をむいたオオカミの姿に、「やっぱり、そうでしょ!」と、大人も一安心です。しかし、「ともだちや」という発想は、さびしんぼう(キツネ)が一生懸命考えたきっかけ作りだということを、子どもたちは直感し、ある種の親近感を持ったのではないでしょうか。このキツネとオオカミのコンビは、その後、周りの動物たちも巻き込み、ともだちの輪を広げ、第10巻まで続くシリーズとなっています。

『ともだちや』(偕成社) 内田麟太郎 著 降矢なな イラスト ともだちはお金で買えない大切な存在、ということを優しく教えてくれる絵本。
『あのときすきになったよ』(教育画劇) 薫くみこ 著  飯野和好 イラスト 主人公がおもらしをしてしまったときに、おもむろに水の入った花瓶をとったしっこさんは・・・

















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