今月の旅指南

2010年9月4日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 「岸和田の1年は、だんじり祭〔まつり〕を中心にまわっています。各組織ごとに役割分担を決め、1年前からスケジュールを立てて準備するんです」

 とは、子どもの頃からだんじり囃子〔ばやし〕を聞いて育った岸和田市観光振興協会の武田吉清〔よしきよ〕さんの弁。岸和田では「盆や正月に帰省できなくても、だんじり祭だけは帰ってこい」と言うほど人々の祭りへの思いが強いという。

 岸和田だんじり祭といえば、だれもが思い浮かべるのが、猛烈な勢いで街角を曲がる「やりまわし」だろう。時に勢い余って建物にぶつかることもある迫力満点の祭りだが、

 「豪快さとともに緻密さも備えているんですよ。やりまわしも、500~1000人の曳き手の息がぴったり合い、統率されているからこそ、うまく曲がることができるんです」

危険と隣り合わせの祭りを事故なく成功に導くのは、町の人たちの結束力の強さだ

 指揮を執るのは、だんじりの大屋根の上に立つ「大工方〔だいくがた〕」。両手に渋団扇〔しぶうちわ〕を持ち、右へ左へと飛び跳ねて踊れば、揃いの半纏〔はんてん〕にねじり鉢巻きの若衆が、威勢のいい掛け声とともに息を合わせてだんじりを曳く。こうして、昼間、市内を豪快に駆け回っただんじりは、夜になるとおよそ200個の提灯に火が灯され、きらびやかな姿へと変身する。

 祭りには35台のだんじりが繰り出すが、各町が競って造ったというだけあって、どれも絢爛豪華だ。大屋根や柱、梁〔はり〕には、神獣や神話、合戦物をテーマにした精緻な彫り物。合戦物の題材に『難波戦記』など、豊臣家や秀吉に関わるものが多いのは、いかにも大阪らしい。

 祭りの始まりは元禄16(1703)年。岸和田城主の岡部長泰が京都伏見稲荷を城内に勧請〔かんじょう〕し、五穀豊穣を祈願する稲荷祭を行った。その際、城内に町民たちがだんじりを曳き入れ、藩主の前でにわか芸を披露したのが始まりとされる。

 それから300年以上、祭りは町の人たちの心意気に支えられ、守り継がれてきた。「祭りを通して培われた“年長者を敬う心”や“地域の団結力”は僕らの誇りです」と武田さん。岸和田だんじり祭は、この町に、“目に見えない宝”をも残しているようだ。

 
 
 
 

岸和田だんじり祭
〈開催日〉2010年9月18~19日
〈会場〉大阪府岸和田市・岸和田地区、春木地区(南海本線岸和田駅または春木駅下車)
〈問〉岸和田市観光振興協会 072(436)0914
  http://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/danjiri/

◆ 「ひととき」2010年9月号より

 

 

 

 

 


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