2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月25日

 良識的な社説です。健全な見方を述べています。

 イランとの対決やレジーム・チェンジを求めるトランプ、同政権幹部の強硬な発言、議会強硬派の動きなど、状況は深刻になっているとして、同紙は危機感を募らせているようです。世界の安定に関心を持ち、とりわけ中東のエネルギー資源に死活的に依存する日本としても十分フォローしていく必要があります。

 米国で戦争は常に政権浮揚になります(少なくとも開始直後の間は)。ロシア疑惑が深まる中、来年は中間選挙があり益々活路が見えないトランプ政権がいよいよ窮地に陥った際、政治基盤挽回のため、イラン強硬策に打って出るリスクは考えられないことではありません。マティスなど米軍部がそれに乗るとは思えませんが、分かりません。

 イラン核合意は不完全なものですが、リスクの軽減には役立っています。あれより良い合意が可能だったとは考え難いです。IAEAもイランが合意を順守していることを認定しています。勿論、イランの行動にはいろいろ重大な問題があります。中東の大国として覇権的野望を持ちそのために行動していることは否定できません。ヒズボラなど過激派の支援は規制すべきです。他国政治への介入は止めるべきです。イスラエルの生存権は認めるべきです。地域の状況を不安定にするようなミサイル発射など軍事力の増強は規制すべきでしょう。北朝鮮といった「ならず者国家」との軍事協力を嘗て進めてきた履歴もあります。宗教政治の下での人権弾圧も問題であり、民主化を進めていくべきです。しかし、これらのことは外交を通じて推進していくものであり、レジーム・チェンジの戦争を正当化することにはなりません。

 中東情勢が一層流動化しています。中東のもう一つの大国であるサウジは、サルマン国王になって以後言動がダイナミックになっている点は一定限度評価されますが、イエメン介入やカタールの封鎖など行動が不規則になっています。

  
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