2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2010年9月24日

《参考》宇宙戦略本部「平成23年度概算要求における宇宙関係予算について」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/yosan/h23/100901gaisan.pdf

編集部(以下太字) 8月末日、2011年度宇宙関係予算の概算要求が提出されましたが、どのようにご覧になりましたか? 

鈴木(以下「――) かつてのようにすべての分野を網羅した戦略や予算ではなく、メリハリは多少出てきたのではないか、と評価できる面もあります。ただ、そもそも宇宙政策の大方針(たとえば技術開発を優先するのか、費用対効果を優先するのか、など)が必ずしも明確になっていません。

 9月上旬、宇宙戦略本部は6つの柱を立てて、戦略的目標を設定しましたが、これらは大きな戦略目標というよりは、戦術的目標(個別プロジェクトをやる/やらない、など)を設定したに留まっています。まずはそうした点を明確にするべきだと思います。

 私は、宇宙開発は「研究開発から利用」へとシフトすることを大原則と考えています。利用を進めていくためのプロジェクトに重点をおきながら、国家経済、日本の宇宙産業の競争力、宇宙を利用した効率的な政策運営と、国際的な配慮という点への影響を考えるべきではないでしょうか。

個別項目、たとえば大きな予算のついている有人探査や、小型ロケットについてはいかがでしょうか?

――上記の観点からいくと、有人探査は宇宙戦略のなかでの優先順位は低いものだと思いますが、ただ、国際宇宙ステーション(ISS、150億円)および宇宙ステーション補給機(HTV、244億円)の運用については国際的なコミットメントがあるので、すぐに是非の検討に入ることは難しいものです。

 たとえばISSに関しては、そもそもアメリカは2016年までの運用としていましたが、にわかに2020年まで運用が延びました。日本の協力も2020年までとしなくてはならないのか、疑問が残ります。2016年をひとつの区切りとして、どのように予算をつけていくべきか、政治的な判断が必要です。

 その他では、ロケット開発(約380億円)については、継続にあたってもっと踏み込んだ議論が必要です。対象となっている小型固体燃料ロケットの開発が将来的に日本の宇宙産業にどのように資するのか、どのくらい小型固体燃料ロケットに搭載を必要とするプロジェクトがあるのか、現在でも大型ロケットには、乗せる衛星に余裕がある状態なのに、新たなロケット開発を必要とするのか、といったことについて、議論を深めるべきだと思います。

 逆に、利用に関しては、まだ予算とその効果が十分明確ではない点が多くあるように思います。たとえば外務省が、宇宙外交を推進する経費としています。こうした予算がついたことは良いことですが、とはいえ、宇宙外交を重点的に進めるとすれば、これだけの予算でよいのか、という疑問が残ります。

 大事なことは、予算を増やせば「モノ」、「ハコモノ」にお金をかけることが多くなりますが、むしろ「知恵」をつかって「利用」を進めるためには、予算をどれだけ当てるか、というよりも、どのように宇宙政策に対する認識を変え、政治家や官僚の認識や行動を変えるかが問題です。

準天頂衛星みちびきについて、国土交通省の予算項目に、かつてはなかった「利用」の文言が入りました。

――国交省が準天頂衛星を利用するということを明言していることは、大変重要であり準天頂衛星システム構築が、一歩前に進んだことと受け取れます。ただ、問題は開発さえ未定の2機目、3機目についてです。国交省がこれからその予算を負担するかどうか、が重要なポイント。その意味では、利用を進めるというだけでは、将来に向けての一歩とはいえ、まだ納得する段階ではない、ということではないでしょうか。

次ページ 惑星探査など「宇宙科学」の色彩濃いプロジェクトを判断する基準は?


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