前向きに読み解く経済の裏側

2017年9月25日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 国の財政を家計にたとえて、「給料等の収入が631万円しかないのに975万円も使っていて、不足分の344万円は銀行から借りているような家計は、早晩破産するでしょう」と言う人がいますが、これは大変ミスリーディングなたとえです。誤りと言った方が良いほどです。その理由について考えてみましょう。

(AlexLMX/iStock)

国の財政を家計にたとえるのが不適切な理由は、倹約の影響にあり

 家族が倹約した場合、家族の赤字は減ります。家族旅行を我慢すれば、ホテルや交通機関の収入が減る一方で、家族の家計は改善します。収入が減って困るのは、赤の他人(ホテルや交通機関の従業員等)ですから、気にする必要はありませんし、自分の収入に跳ね返ってくることもありません。したがって、「家計が赤字なら倹約しろ」というのは正しいのです。

 これは、実際の国(地方公共団体と区別する意味で国と呼んでいるが、日本国のことではなく、日本政府のこと)、の財政とは全く状況が異なります。実際の経済では、国が歳出を削減すれば、民間部門の収入が減りますね。それにより、国民が貧しくなり、失業が増えたり、国の税収が減ったり失業対策で歳出が膨らんだりするわけです。

 国にとっては、国民は赤の他人ではありません。国民が失業しようと貧しくなろうと、自分の財布が潤えば良い、というものではありません。そこを無視した議論は、現実的ではありません。

歳出は家計内の移転

 一方、日本国を4人家族(構成員はサラリーマンである夫、専業主婦である妻、夫の親、夫婦間の子)とすれば、上手に説明ができます。国を夫、民間部門を親と妻と子にたとえるわけです。

 国の一般会計予算の歳出を見ると、社会保障が32・7兆円、国債費が23・5兆円、地方交付税交付金等が15・6兆円、その他一式(公共事業、防衛費、等々)が20・5兆円となっています。

 社会保障は主に高齢者への給付ですから、家計で言えば夫から親への小遣いに相当します。地方交付税交付金は、収入の多い人から少ない人への移転ですから、家計で言えば夫から妻と子への小遣いに相当します。国債費は、過去の借金の元利払いです。夫は親や妻や子から借金をしているので、その分の元利払いが必要なのです。公共投資等々は、電気ガス水道代、妻への家事担当の対価(後述)、等々に相当しますが、金額的には妻に支払う家事労働の対価が主です。

 親は多額の預貯金を持っていますが、生活費を負担する気はありません。夫が給料の範囲で暮らせないことは知っていますが、不足分を親が貸すことはあっても、負担はお断り、というわけです。小遣いも、多額に要求します。「嫁が家事を担当していることで、それに対する対価を要求される。その分は預貯金を取り崩すのは嫌だから、その分くらいは小遣いをよこせ」というわけです。

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