世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月11日

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 サウジとイランの敵対関係に変化が生じつつあるかもしれないと、9月7日付の英エコノミスト誌が報じています。要旨は以下の通りです。

(iStock.com/Ljupco/leoniepow/Kalina Volodimir/seb_ra/Trifonenko)

 サルマン国王は2015年に王位に就くと、息子のムハンマド国防相と共に武力による地域からのイランの影響力排除に狙いを定め、イエメンでイランの仲間、ホーシー派に戦争をしかけた。また、同年、メッカで起きた群衆の暴走で死亡した多数のイラン人巡礼者への補償を拒否した。翌年には自国のシーア派聖職者、ニムル師を斬首し、イランとの外交関係を断ち、スンニ派諸国による軍事同盟結成を主導した。

 しかし、2年後の今、ムハンマド王子(6月より皇太子)は考えを変えつつあるようだ。イランの様々な手先と対決するのではなく、彼らやシーア派指導者と関係を結ぼうとしている。今月には25年前に断ったイラクとの関係を回復して国境を再開し、情報共有に関する合意締結のために幕僚長をバグダッドに派遣し、イラクの貿易使節団をリヤドに迎えた。6月には、イラク首相でシーア派のアバディを歓待し、7月にはジェッダでイラクの過激なシーア派聖職者、サドル師と会談した。

 サウジはイラク南部のシーア派の聖都、ナジャフに領事館を開設し、同市のイマーム・アリ廟を訪れる自国のシーア派のために直行便を飛ばす計画だ。

 実際、サウジはシリアに対する姿勢も変えた。かつてサウジの聖職者はスンニ派イスラム戦士に対し、シリアを支配するアラウィー派への反逆を促したものだが、今は、ムハンマド王子は、シリアの反政府スンニ派への支援を止め、リヤドに亡命した同派指導者たちにアサド政権との妥協を促したと言われる。

 サウジは北イエメンへの爆撃を続けているが、ここでも、取引を望む和解的姿勢が見られる。異例にも、市民14人が亡くなった8月25日のサナア空爆について謝罪し、また、国連仲介によるサナア空港とイエメン最大の海港フダイダの再開も示唆している。しかし、あるサウジ政府関係者は、クウェートやバーレーンでのイラン扇動のテロを挙げ、イランのイエメン介入を嘆く。

 いかなる進展も容易ではないだろう。サウジはイランに対して宥和的と見られるのを警戒している。一方、シーア派主導のイラク政府がサウジを受け入れるのも容易ではない。サドルは、ニムル師の処刑に怒って蜂起したサウジのシーア派をサウジ軍が制圧している最中にムハンマド王子に会った、として自国で激しい非難を浴びた。一方、一部のサウジ人は、王子がモスルのIS撃退――そしてスンニ派の偉大な美しい都市の破壊――についてアバディを祝したことに仰天した。

出典:Economist ‘Enemies no more?: The Saudis may be stretching out the hand of peace to their old foes’ (September 7, 2017)
https://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21728686-rapprochement-iran-may-be-pushing-it-saudis-may-be-stretching-out

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