食の安全 常識・非常識

2017年10月6日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ライターに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008受賞。2011年4月、科学的に適切な食情報を収集し提供する消費者団体「Food Communication Compass(略称FOOCOM=フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」を開設した。

 消費者庁が、健康食品に関する新しいパンフレットQ&Aを公表しました。

 消費者庁といえば、機能性表示食品の届出を受け付けたり、特定保健用食品(トクホ)の審査事務を担当したり、ともすると健康食品を推進する役所と見られがちですが、今回の中身はまったく異なります。

 とてもわかりやすく、単刀直入に健康食品の問題点を指摘しています。これを読んで青ざめている健康食品業者も多いのでは。紹介します。

5つの問題点を指摘

 まずはパンフレット。A3に両面印刷して折って使うようになっています。健康食品の5つの問題点として挙げられているのは次の通り(図1)。

図1 健康食品 5つの問題
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1 健康食品で病気が治る?
2 天然・自然由来のものが原料なら安全?
3 専門家の研究結果と同じ効果がある?
4 体験談は信用できる?
5 一時的な体調不良は効果の証拠?

 答えは全部「ノー」。それぞれについて、解説が書かれています。健康食品には病気を治す効果、防ぐ効果がないこと、体験談は利用者の感想に過ぎず、宣伝のために都合の良い内容のみを編集しているケースもあること、健康食品のセールスでしばしば用いられる“好転反応”、つまり、健康食品をとることによって体調が悪くなり(毒素を排出している、などと説明されます)、その後に良くなるという反応など、実際には起こりえないことが説明されています。

 ここで言う健康食品の中には、トクホや機能性表示食品等も含まれています。

 このところ、トクホや機能性表示食品を食べて健康被害が出た、という事例を国民生活センターや東京都などが公表しています。こうした事例も踏まえてのパンフレットの内容なのでしょう。

健康被害も出ている

 健康食品による健康被害の内容も、詳しく説明されています。「健康食品は食品なので過剰摂取しても安全」という考えは間違いです。粗悪製品、過剰摂取、アレルギー体質の人の利用、医薬品との相互作用等、さまざまな被害があると考えられており、東京都の調査では、健康食品によって身体の不調を感じた人は利用者の4%程度。下痢や腹痛、発赤や発疹、身体のかゆみなどのアレルギーと思われる症状が多いと報告されています。しかし、消費者の自己判断で利用され、健康被害の正確な実態はわかっていません。

 医薬品は、病気の人を対象にして有効性や安全性が検討されて医師や薬剤師の管理の下に用いられ、もし副作用等の健康被害が出た時には救済する仕組み(医薬品副作用被害救済制度)もあります。一方、健康食品にはそのような制度がありません。

 私の取材でも、健康被害は結構出ており、泣き寝入りしている人も少なくない、と思われます。

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