前向きに読み解く経済の裏側

2017年10月22日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 老後のために貯蓄をしよう、と考えている人は多いでしょうが、どの程度貯めれば良いのか、貯めた資金は銀行預金にしておけば良いのか、様々な不安があることでしょう。そこで、老後資金についてシリーズで考えてみることにしました。第1回の今回は、老後資金の考え方の全体像を、『老後破産しないためのお金の教科書』の著者である塚崎が、解説します。

(G0d4ather/iStock)

最大のリスクは長生きとインフレ

 老後資金を考える際、何と言っても最大の問題は、どの程度長生きするかわからないこと、長生きしている間にインフレが来て老後の蓄えが目減りしてしまうことです。

 日本人の平均寿命は医学の進歩等々で今後も伸び続けるでしょう。加えて、個々人にとっては、平均寿命よりも長生きする可能性も大きいことに留意する必要があります。長生きは良いことに違いありませんが、老後資金のことだけを考えれば、大きなリスクです。どれだけ貯金があっても、取り崩していけば、いつかは底を突きますし、インフレで貯金が目減りすれば、底を突く時期が早まってしまうでしょう。

 インフレに備えるのは、それほど難しいことではありません。老後の蓄えをドルや株といったインフレに強い資産で持てば良いからです。もっとも、ドルや株は値下がりするリスクがあるので持ちたくない、という人も多いでしょうから、そのあたりは当シリーズでゆっくり考えて行きましょう。

 一方で、長生きのリスクに備えるのは、容易ではありません。「元気な間は働く」というのが最大の備えですが、元気でなくなってから他界するまでの期間が長ければ、苦しいですね。

 そうした時に、圧倒的に頼りになるのが公的年金です。いくら長生きしても、生きている間は年金が受け取れますし、しかもインフレが来たら(原則として)インフレ分だけ年金支給額が増えるのです。年金は、現役世代が高齢者を支える仕組みなので、インフレが来ると現役世代の給料が増え、現役世代の払う年金保険料が増えるため、高齢者に支払う年金が増やせるのです。

サラリーマンは退職時に2000万円がメド

 老後資金は1億円必要だと言われています。しかし、1億円持っている現役サラリーマンは稀です。それで大丈夫なのは、サラリーマンは年金が充実しているからです。加えて、退職金も出るでしょうし、遺産も受け取れるかも知れませんから。

 標準的なサラリーマン夫婦は、老後に毎月22万円程度の年金が受け取れるとされています。実際には今少し少ないかもしれませんが、いずれにしても大変心強い老後資金の柱です。そこで、一応のメドとして、退職時点で2000万円程度の金融資産があれば老後は何とかなる、と考えて下さい。もちろん、老後は何があるかわかりませんので、普通の老後だとすれば、という前提です。詳しい話は別の機会に。

 自営業者は、個別の事情が様々ですから、一概には言えませんが、現役時代に年金保険料を支払い続けても老後の年金が夫婦合計で13万円しか受け取れないこと、退職金がないことなどを考えると、若い時から老後の蓄えをしっかりしておくこと、元気な間は働くこと、などが重要でしょう。なお、現役時代に年金保険料の未払いがあると、老後の最強の柱である公的年金が受け取れない場合もありますから、年金保険料をしっかり支払っておくべきであることは当然です。

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