世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月2日

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 米国のシンクタンクAEIのアジア研究部長のブルメンソールが、Foreign Policy誌のウェブサイトに9月29日付けで掲載された論説において、最近ワシントンで拡大している対北封じ込め・抑止論につき6の点を挙げ反駁し、むしろ統一政策の方がベターだと述べています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/MiroNovak/Rangga-Wijaya/ZarkoCvijovic)

 ワシントンでは、北の核を認めた上で封じ込めと抑止の政策を取るべきだとの新たな通念が生まれている。それは残る唯一のオプションかもしれないが、そのような政策に必要となることが十分な思考されていない。

 エンゲージメント、戦略的忍耐の政策といった失敗した政策に深く関与してきた人々が、今や強硬な抑止論者となっている。これら新リアリスト達は、北朝鮮は決して核を放棄しない(そのことは06年頃までに既に分かっていたことなのだが)、金正恩は合理的だから我が方が適切なミサイル防衛などの措置を取れば北を抑止できる、と主張する。更に、北朝鮮関連物資の運搬阻止など制裁の強化を主張する。そして、軍事力強化、適正なシグナリング(意思伝達)、同盟強化をすれば金正恩を抑止できると論じる。

 しかし、子細な検討が必要だ。第一に、金正恩の合理性の問題である。同人はある意味で非常に合理主義的である。言った事は必ず実行してきた。しかし、金正恩が米国の抑止政策にどう対応してくるかにつき確固とした評価が米国にできている訳ではない。「今まで韓国を攻撃しなかった」との議論は意味がない。北はカダフィの二の舞にならないように防衛的に行動しているとの前提は間違っている。

 第二は、抑止は安定的であるとの考え方である。冷戦時代には代理戦争もしたし、同盟の危機は日常的なことだった。当時我々はソ連を良く理解していた。米ソは第二次大戦では同盟関係にあったし、ケナンは長年モスクワに住みソ連をウォッチしていた。米国の戦略家は、ソ連は最終的には注意深いので封じ込め得るとの結論に達した。金正恩については同様の結論を下せない。

 第三に、国防支出につき冷戦時のような超党派の支持があるのか。封じ込めを主張している人々が政権を取っていた時、大統領や議会は軍に厳しい対応をとった。

 第四は、抑止・封じ込めに必要なことである。金正恩を防御的にしておくためには、日米韓が防御から攻撃に姿勢を変えることが必要となる。それには莫大な諜報や軍事能力が必要となる。中距離核戦力を保有するためにINF条約からの脱退も必要となるだろう。

 第五は、核兵器のことである。日米韓でNATOのような核抑止力の枠組みを作ることが必要となる。米国は、かつてフランスの核化を認めたようにアジア(日本、韓国)の核化を認めざるを得なくなろう。

 第六に、北の国民の問題がある。我々が北を認め抑止することは北の国民を金正恩に任せることを意味する。封じ込め論者はこの問題をどう考えるのか。

 私は統一政策がベターであると考える。同様の軍事支出やイデオロギー・政治戦争が必要であるが、アジアの核化は止めることができる。大物を統一問題責任者に任命し、韓国の下にできる新たなコリアのために国際的支援を求めていく。人権の問題にも対応し、国民生活の改善を図り、北のエリート層には隠密に支援をする。そのように多くのことはできないと言うのであれば、抑止政策のコストと結末について本当の議論をしようではないか。

出典:Daniel Blumenthal,‘It’s Time to Reckon With What It Would Really Take to Deter North Korea’(Foreign Policy, September 29, 2017)
http://foreignpolicy.com/2017/09/29/its-time-to-reckon-with-what-it-would-really-take-to-deter-north-korea/

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