海野素央の Love Trumps Hate

2017年11月4日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプとパパドポロス」です。ロシア疑惑を巡り、ドナルド・トランプ米大統領の3人の元側近が起訴されました。トランプ陣営のポール・マナフォート元選対会長と元幹部で同会長のビジネスパートナーであったリック・ゲーツ氏は、資金洗浄や脱税など12の罪で起訴されました。一方、外交顧問であったジョージ・パパドポロス氏は、米連邦捜査局(FBI)に対する偽証の罪で起訴されました。同氏は、ロシア疑惑解明のカギを握る最重要人物として、今、最も注目を浴びています。

 本稿では、まずパパドポロス氏のトランプ陣営における役割について述べ、次にトランプ大統領のロシア疑惑に対する対策について分析します。そのうえで、今回のトランプ・アジア歴訪とロシア疑惑について考えてみます。

(bananajazz/iStock)

「ボランティア」のパパドポロス

 トランプ大統領は、30歳のパパドポロス氏が起訴されると、「ジョージという名の若い下っ端のボランティアのことなんか、ほとんど誰も知らない。すでに嘘つきだと証明されているじゃないか」と自身のツイッターに投稿をして、同氏と距離を開けています。サーラ・ハッカビー・サンダース報道官は、ホワイトハウスでの定例記者会見で、パパドポロス氏に関する記者団からの質問に対して「彼はボランティアなので、彼の役割は非常に限られていた」と述べ、影響力はなかったと断言しています。

 ここで注意を要するのが、「ボランティア」の解釈の仕方です。ボランティアには、無給で地位が低く影響力がないというイメージがあります。ところが、米大統領選挙ではボランティアとして参加した外交問題などのアドバイザーは、選挙に貢献して、政治任用によって政権内で高い地位に就くことを目的に仕事をしているのです。起訴されたマナフォート元選対会長も例外ではありません。同会長もボランティアで給料は出ていませんでした。従って、一般に日本人が描くボランティアとは異なるのです。

パパドポロスの役割

 トランプ陣営でパパドポロス氏は、どのような役割を果たしていたのでしょうか。2016年3月31日、トランプ候補及びジェフ・セッションズ上院議員(共に当時)が参加した安全保障問題の会議に、パパドポロス氏は外交顧問の一人として出席しています。裁判所の文書によれば、この席で同氏はトランプ候補とウラジーミル・プーチン露大統領の面会を提案したと言われています。

 選挙期間中トランプ候補は、ロシア政策に関してオバマ政権との相違を鮮明にして、「米ロ関係の修復は米国に利益になる」と主張しました。パパドポロス氏は、トランプ陣営とロシア政府のブローカーの役割を果たそうとしていたフシがあります。実際、同氏は海外でロシア政府関係者と接触を図り、トランプ陣営の幹部に報告をしています。

 これに対して、トランプ陣営の幹部はパパドポロス氏にロシア政府関係者にアプローチをしないように指示を出していません。ここは1つポイントになるところです。

 しかもトランプ大統領は選挙期間中、米ワシントン・ポスト紙の編集委員とのインタビューの中で、パパドポロス氏を「彼は、石油・エネルギーのコンサルタントで、素晴らしい人だ」と賞賛しました。その音声が残っていました。トランプ大統領が、パパドポロス氏を100%認識していた証拠です。

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