英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのルーラ・カラフが、10月19日付け同紙掲載の論説で、イラン核合意に対する欧州の関心を説明し、欧州はどうやれば核合意を救えるかを論じています。要旨は次の通りです。
トランプがイラン核合意を毀損しようと準備をしている時、欧州はその弊害を封じ込める努力をしていた。英国はイラン原子力庁長官アリ・アクバル・サレヒの訪問を受けた。来年にはマクロンがフランスの大統領としては1979年の革命以来初めてイランを訪問することを検討中である。
イランの合意遵守を認定しないというトランプの決定は、問題を議会に預けることになった。議会は法律の重要規定の変更を成すか、またはイランに対する制裁を復活させ合意を殺すか、をせねばならない。トランプの決定はまたEU3(英、仏、独)に合意を生かし続けるという問題含みのミッションを課すこととなった。
イランと核問題について了解を遂げることについての欧州の関心は一貫したもので、かつ米国のそれよりも古い。10年前にイランを交渉に引き出したのはEU3であり、2003年にはイランの核活動の凍結を勝ち取った。凍結は短時間で崩壊したが、その後、オバマ政権が交渉に参加し、イランへの核拡散を10年間防ぐ合意を達成した。
従って、欧州はトランプの決定には痛く失望した。これまで米国に強く働きかけて来たが、失敗した。今後は二つの戦線――即ち、対イラン・タカ派が蝟集する米国議会、および進路変更のため強硬派が急襲を狙って待ち構えるテヘラン――で戦わねばならない。
欧州は、トランプが合意から未だ技術的には離脱しなかったことに安堵している。イランの反応もこれまでのところ抑制されている。目下のところは、イランを合意にとどめ置く上で合意に対する欧州の政治的支持で十分なようである。イランの強硬派といえども合意崩壊の責任は取りたくないのである。
しかし、今後状況は厳しくなる。トランプの決定は合意の基底にある経済的恩恵を損なうことで合意の先行きに暗雲を投げかける。もし、イランに対する投資が干上がれば、ロウハニは核計画を抑制することの最大の論拠を失う。トランプの決定がなくても、主要な銀行はイランとの取引きを依然として怖がっており、経済的恩恵は貧弱なものであった。トランプは合意を破ったわけではないが、イランとの投資と貿易を阻害するには充分である。
もう一つのリスクは、トランプがより厳格な合意の実施とイランの弾道ミサイル計画に対する新たな制限を要求したことである。またトランプは近隣諸国へのイランの干渉に対抗する決意でもある。これらの変更が成されなければ、合意を終了させるとトランプは述べた。しかし、再交渉の企てはイランの離脱を招きかねない。
米イラン間で、EU3は妥協を見出すのに苦労するであろう。一つの途は弾道ミサイルと中東におけるイランの役割について別個の協議を新たに設けることである。それは欧州の関心事でもある。ロシアと中国の支持を得られれば、イランの参加を促すことが出来よう。協議が核合意の枠外のものとして工夫されるのであれば、イランを説得することは不可能ではないかも知れない。核合意の教訓は、主要国が結束を示せればイランの協力のチャンスはうんと大きくなるということである。
出典:Roula Khalaf,‘How Europe can save the Iran nuclear deal’(Financial Times, October 19, 2017)
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